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「それ何?」
「な、何だろうね、わからないや、うん」
莉音はあわてて引き出しを閉めようとしたが、
礼央がそれを手にする方が早かった。
それは、ローター。
「…?何だろう」
良かった、わかってない。
「こ、子供のオモチャじゃない?ほら、別荘に家族連れとか来たらさあ」
「どうやって遊ぶのかな」
こら、興味を示すな!
「ふ、振り回して戦うとかさ」
我ながら無理がある。
「ふーん。それにしては小さくないか」
「とにかく閉まっておこうね」
礼央から取り上げて、思い切り引き出しを閉めた。
初心者マークの礼央に
こんなもの使われたら絶対壊される。
勘弁してよ。
「それよりお腹がすいた。用意してくれていたランチ食べよう」
「そうだな」
ここはそれでおさまった。
ランチはサンドイッチにサラダ、スープ、フレッシュジュース。
外からは見えないベランダで、青空と緑に包まれ、ぱくぱく。
ポットに用意されていたコーヒーも美味しい。
人気が出てからあまり外に出れない中、
2人で自然の中で過ごせるのは何て幸せな事か。
スマホで撮られる事もないから思い切りサンドイッチをかじれる。
アホな顔して大口開けて食べてるアイドル、なんて写真をツイートされる心配もない。
「風が気持ちいいねえ」
「そうだな」
一緒に暮らしていても、マンションでこんな開放感は得られない。
ありがとう、マネージャー…、と莉音は思った。
思った。
思ったはずだった。
「やめろおおお!」
バスローブの前を合わせ、莉音は叫んでいた。
昼食後、2階に広いバスをみつけ、2人でゆっくり浸かってほのぼのしたあとだった。
素肌にバスローブでお昼寝…
の
つもりだった。
うとうとしていたら…
まさか。
まさか。
まさか礼央がローターを手に前に立つとは、
想像外だった。
「礼央、それどうする気なんだよ!」
「説明書がないから、妹に写メしてLINEできいてみた」
妹おおお!
腐女子があああ!
どうして答えたああああ!
その前に家族に聞くなああああ!
バカなの?ねえ、バカなの?
「あ、大丈夫だ。マネージャーの友達のものだって書いといたから」
何が大丈夫なんだよ。
マネージャーとその友達、妹さんの頭の中でもう完全に変態認定されてるよ。
「とにかく、僕はイヤだからね、それ!」
「え?」
「え?じゃない!僕、そんなの使ったことないから!怪我したら嫌だから!」
「…嫌か」
「嫌だ!」
礼央は首を傾げた。
莉音はなんだかムカムカしてきた。
「だいたい何なの?礼央はSEXしていても僕の事好きじゃないんでしょ?」
「え…」
「ならば単なる好奇心だよね。そんな気持ちで道具まで使われたら迷惑だよ!」
あっ
言っちゃった
今まで
僕から
押せ押せで
抱かれてきたのに
言っちゃった
「…ごめん」
礼央は何とも言えない顔をして、
寝室から出ていった。
莉音はあらためて自分の気持ちを知った。
ああ
イヤだ
もう
ただ抱かれるだけは
イヤだ
礼央の心が欲しい
離したくない
身体も
心も
…ただの好奇心で
抱かれたくない
「…あー…こんなの、やだ」
莉音の瞳から
涙が溢れてきた
愛して欲しい
僕を
続く