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放課後の教室は、
いつも少しだけ胸が苦しくなる。
窓際の席で、
ゆあんくんは頬杖をつきながら校庭を眺めていた。
グラウンドから聞こえる部活の声は遠く
教室に残っているのは数人だけ。
その中に――うりがいる。
「ゆあんくん、今日も残ってるんだ」
振り向くと、カバンを肩にかけたうりが立って
いた。
柔らかく笑うその顔を見るたび
心臓が一拍遅れる。
「うん。なんとなく」
本当は理由なんてはっきりしている。
うりがここにいるからだ。
同じクラスで、席も近くて、話す機会 は多い。
テスト前にノートを見せ合ったり
くだらない話で笑ったり。
周りから見れば、仲のいい友達。
―――それだけ。
「じゃあ、先帰るね。また明日」
うりは手を軽く振って、教室を出ていく。
その背中を見送りながら
ゆあんくんは小さく息を吐いた。
“好きだ”なんて言葉
簡単に言えたらどれだけ楽だろう。
でも、もしこの距離が壊れたらと思うと
喉の奥で言葉が詰まる。
翌日、昼休み。
屋上で風に当たりながら
二人は並んで弁当を食べていた。
「ねえ、ゆあんくん」
「なに?」
「ゆあんくんってさ……好きな人、いる?」
不意打ちみたいな質問に、心臓が跳ねる。
箸を持つ手が一瞬止まった。
「……どうして?」
「なんとなく。気になっただけ」
うりは空を見上げていて、表情は読めない。
ゆあんくんは少しだけ迷ってから
正直に答えた。
「……いるよ」
「… そっか」
その一言は、軽いのに重かった。
うりはそれ以上何も聞かず、話題を変える。
風が吹いて、沈黙が流れる。
その沈黙の中で、ゆあんくんは気づいていた。
………言わなきゃ、ずっとこのままだ。
放課後、校門の前。
帰り道が同じ方向だというだけで
一緒に歩くこの時間。
「うり」
名前を呼ぶと、うりが立ち止まる。
「俺さ」
声が震える。
でも、逃げなかった。
「好きな人……うりなんだ」
一瞬の静寂。
世界が止まったみたいに感じた。
「……遅いよ」
そう言って、うりは困ったように笑った。
「俺も、同じこと言おうとしてたのに」
驚いて顔を上げると、うりの頬は少し赤い。
「片思いだと思ってた。ずっと」
夕焼けの中で、二人の影が並ぶ。
片思いは
静かに終わって
ゆっくりと恋に変わった。
その帰り道は、昨日までより少しだけ近くて
少しだけ、未来が明るく見えた。