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「……じゃあ」
校門の前で、気まずそうに立ち尽くしたまま、
ゆあんくんは頭をかいた。
「俺たち、えっと……」
「付き合ってる、ってことでいいんだよね」
うりが先に言って、少し照れたように笑う。
「……うん」
たったそれだけのやり取りなのに、胸がいっぱいになる。
昨日まで“友達”だったのに、
今日からは“恋人”。
なのに、何をどうすればいいのか全然わからない。
「明日も一緒に学校行く?」
「え、いいの?」
「……嫌じゃなければ」
「嫌なわけないでしょ」
そんな会話すら、ぎこちない。
でも、それが妙に心地よかった。
翌朝。
いつもより少し早く家を出たゆあんくんは、
待ち合わせ場所でそわそわしていた。
「おはよ」
後ろから声をかけられて振り向くと、うりが立っている。
制服姿も、いつもと同じはずなのに、なぜか直視できない。
「お、おはよう」
並んで歩き出す。
肩と肩の距離が近い。近すぎて、触れそうで触れない。
「ねえ」
うりが小さく言う。
「手……つなぐ?」
一瞬、思考が止まった。
「……いいの?」
「恋人なんだから、いいでしょ」
そう言って差し出された手に、ゆあんくんはそっと指を絡める。
触れた瞬間、心臓の音がうるさくなった。
「緊張してる?」
「……うりこそ」
「してるよ」
二人で顔を見合わせて、同時に笑った。
学校では、まだ大っぴらにはしない。
教室では今まで通り、少し距離を保って過ごす。
でも、目が合うだけで、
廊下ですれ違うだけで、
「好き」が溢れそうになる。
昼休み、ゆあんくんはふと気づく。
――片思いのときより、怖い。
失う怖さじゃない。
大切にしたい気持ちが、こんなに重いなんて知らなかった。
放課後、屋上。
風に吹かれながら、二人は並んで座っていた。
「ねえ、ゆあんくん」
「なに?」
「俺さ……ちゃんと恋人できたの、初めてなんだ」
「……俺も」
沈黙のあと、うりがゆあんくんの袖をつまむ。
「だからさ、うまくできなくても……ゆっくりでいいよね」
その言葉に、胸がじんわり温かくなる。
「うん。ゆっくりでいい」
ゆあんくんはそう言って、少し勇気を出して、
うりの肩に自分の肩を寄せた。
うりは驚きながらも、逃げなかった。
夕焼けが、二人を包む。
片思いだった時間も、
すれ違いそうになった気持ちも、
全部ここにつながっていたんだと思えた。
恋は始まったばかり。
不器用で、ぎこちなくて、でも確かに温かい。
――この恋を、大事にしたい。
そう、心から思えた。
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