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「ついたー!ウルルンスター!」
見渡すかぎりの水平線と、反射してきらきら光る水面。筆を握っている右手に、思わず力が入った。
「ねえカエデ、どうかな?」
「うん、すごくきれい…だ……ょ…」
「「!?」」
隣に立っていたカエデの声が急に弱々しいものになった。見れば、膝から砂浜に崩れそうなところだ。あわてて肩を掴んで止める。
「ありがと、アドレーヌ…ちょっと、力が入らなくて…」
「うーん…植物は潮風に弱いと聞いたことがあります。もしかしたらそんな感じなのでしょうか…?」
「そうだね…わたし、光合成で栄養摂るし、枯れ葉の混ざった土…腐葉土?も食べるし…本当の植物っぽいんだ。今まで海がある星には寄ってこなかったから、ぜんぜん知らなかったよ…」
相変わらず博識なリボンちゃんの知識になるほど、となって、その直後にしれっと明かされた衝撃の情報に若干引き気味の空気が流れた。
「そ、そっか…じゃあカエデは泳ぐの、止めといたほうがいいかな?普通の川とかなら泳げる?」
「うーん…分かんないけど、泳ぐのは止めとく。全然気にしなくていいんだけどなぁ」
「でもせっかく来たんだもん、みんなで楽しいことしたいよ!」
カーくんが足元の砂をすくって見せる。泳がずとも、海を楽しむ方法はあるから。
「よーし!おっきい砂の城つくるぞー!」
「…あの…」
「あたしはまず描きたいな!」
「ちょ…その…」
「じゃあ…風があんまり来ないところで日光浴でも」
「目的を忘れちゃダメですっ!!!」
リボンちゃんの一喝でその場にいた全員が静かになった。
「何しにここに来たんですかみなさん!特にカエデさん…あなた一番しっかりしてないといけないんですよ?」
珍しく口調を強めたリボンちゃんの迫力にカエデがうつむいた。けど、
「…本当は?」
「めっちゃくちゃ遊びたいです」
「よし遊ぶぞ!騒いでたらそのうち出てくるでしょ!」
カーくんの言葉で、結局は揃って遊ぶ流れになってしまった。
「あ…アドレーヌさん、カエデさん…ちょっといいですか?」
カーくんがどこかへ泳いでいったきり帰ってこなくなって、およそ十数分。あたしたちしかいないのにもかかわらず声を潜めたリボンちゃんに呼び止められ、あたしと、そばで様子を見ていたカエデは振り向いた。
「カービィさんのいないうちに、話したいことがあって…」
モジモジとした立ち姿、少し赤い顔…普段の彼女とは違う感じだった。
(これは…もしや…)
「…どうしたの?真剣そうな顔して…」
「…笑わないで聞いてくださいね?」
目を見てうなずいたら、少しほっとした様子を見せた。そしてごくりと唾を飲み込むと、口を開いた。
「実はわたし…今日…
カービィさんに、告白しようと思ってるんです」
「…ぅええええええ!?」
「おー、ついに告る気になったんだ!やったじゃん!」
「しかもこっちは認知してたし!!」
顔を赤くしたままのリボンちゃんと、この唐突な状況をどうすればいいかわからずパニック状態になったカエデの様子は、なんとなく話の内容を察してしまったときから予想できていた。
「いやー、あれ以来ずっと気になってたんだよね、いつ進展するのかなーって」
「うわ…昔になにがあったの…?」
「き、気にしないでくださ――」
「あのね、前に旅したとき、リボンちゃんがカーくんにキ「本当気にしないでください!!ね!?」」
言葉の続きを遮ったリボンちゃんの顔はすっかり真っ赤だった。流石にこれ以上からかうとしばらく嫌がられそうなのでここら辺で打ち止めにしておこう。
「…で?希望するシチュエーションは?」
「流石話が早い…やっぱり、夕暮れどきの浜辺が理想ですかね」
「おお、ベタだね…」
「うん。…でも、これには難点があると思うんだ。告白するわけなんだから、カーくんをどこかに呼びだすか連れ出すかしないと。あたしとカエデがどこかに隠れてるのもいいんだけど、怪しまれちゃいそう」
「うーん…二手に分かれて探しに行く、とか口実作って隠れるのは?」
「あっ、すっかり忘れてた…じゃなくて、それだとなんか良くない感じする。捜索するときの真剣な雰囲気より、楽しい思い出作ったあとのしんみりした雰囲気のほうが、ムード出ると思うし」
「熱弁だね…やっぱ女の子って、誰の色恋沙汰でも真剣になりたいものなのかなぁ…」
どこか遠い目をしたカエデの横顔を眺めて、ふとさっきの言葉がひっかかる。
(“やっぱ”ってことは…)
その違和感を追求する前に、カエデが口を開いたのを見て、思わず口をつぐんだ。
「わたしの友達にね――そういう女の子がいてさ。恋してる人を見かけたら、誰であろうと首突っ込んでいく子で…なんかさっきのアドレーヌ見てたら、あの騒がしさが懐かしくなっちゃった」
「カエデ…」
「…その子…水が好きなんだ。もしかしたらリリルのときみたいに、って思って…リボンが無事に告白できたら、海辺とか川の近くを中心に捜してみない?」
「…そうですね。なんだか遊びすぎた気もしますが、本題はそこですから!」
遠くから、ばしゃばしゃと波を立てる音が聞こえる。見れば、夕日に紛れたピンク色が、こちらを目指して泳いできていた。
「…リボンちゃん、頑張れ!」
「…はい!」
あたしは親友の背中を、静かに、けれども力強く押した。
あとがき
お久しぶり(?)ですフジミヤです!
受験やらテストやらでしばらく触れておらず申し訳ありませんでした!急に書きたくなってきたマタアドやらドロアドやら書いてたら案の定遅くなりましたね…ってこれでもいつも通りな方か()
そういえばスマホ触れなかった期間に学パロの神が降りてきまして…現在立ち絵を作成していますので、それが出来次第始めていこうと思います!…また更新速度落ちそうですけどもw
それと並行してもっと挿絵も描いていきたい!シチュエーションは思いついてるから後はやる気と時間の問題ですね…
ではまた次回!次は短めになる予感がします…