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やや重くなってしまった場の空気を変えるように、今度はコユキがルクスリアに質問を投げ掛ける。


「そう言えばアンタのエッチって、アタシの妄想とは真逆で相手のやりたい事やってばっかだったわね? そりゃ現実では妄想どおりって訳には行かないんだろうけど、なんで? アンタ自身がしたい事ってしなくて良かったの?」


「えっ? アタシ、の、したい事?」


コユキの問い掛けに驚いているルクスリア……

コユキは言葉を続けた。


「そうよ、なんかああしてこうしてって言ってたのって最初の彼、後で旦那さんになった人にだけだったよね? その人以外には、甘えることも、求めることも、拒否る事すらしないで相手の希望の通りだったでしょ? んなの不自然に見えたんだけど?」


コユキの言葉を聞いてルクスリアは俯(うつむ)いて考え込んでしまったが、いつの間にかその顔からは淫靡(いんび)な笑みは消え失せていたのであった。


そんなルクスリアの様子をコユキは暫く(しばらく)眺めていたが、彼女が首を大きく傾げたのを目にすると、やれやれといった表情を浮かべ再び声を発するのであった。


「あのね、分かっていないようだから教えてあげるけど、アンタの男性遍歴の中で、アンタ自身が望んで結ばれた相手が初体験の彼、旦那さんだった人だけだって言っているのよ。 良く考えてみて? 他の人達って全員向こうから頼んできたり、無理やりだったり、アンタの弱みに付け込んで来ただけだったでしょう? 特に結婚してから後の二人は、露骨に職場での立場を利用して迫ってきたでしょう? アンタが断れなかったのも理解出来るわよ、ま、アタシだったらぶっ飛ばして終わりだけどね!」


「……」


「まあ、他人から見れば、特に同性から見たらアンタの流されてる所とか、ハッキリ断らない優柔不断さが鼻について、普通嫌われるでしょうけど、自分がしたくてしたくて自ら率先して男を誘い捲っちゃうのが、本来の『淫乱』でその状態に居続けて浸りきってる事が『淫蕩』でしょ? アンタのはだらしなくて自分に主張がない只の『都合のいい女』よ! それか、相手の事ばっかり考えちゃってる『優しさ』かな? 断ったら悪いとか、淋しそうで放っとけないとか、二人の生活の為に仕方が無いとか、分かるでしょ? アンタは『淫蕩』じゃないわ! 罪が有るとすれば自分を粗末に扱った罪、誰にでも良い顔をして本当に好きな人を裏切ってしまった、『愚かさ』の罪よ!」


「! ……」


「『馬鹿のルクスリア』じゃ格好つかないわね、でもまあ、馬鹿なだけじゃなくて二人の子供達に対しては誠実だったじゃない? 一人目が生まれてからは又流されてたみたいだけど、二人目を産んでからは反省したんでしょ? あっさり男関係を清算したじゃない! 子供達に危害を加えられ無い為に、あんなに好きだった旦那と別れるまでした位に『母親』してたわよ、アンタ」


コユキの話を|呆然《ぼうぜん》と聞いていたルクスリアだったが、やや置いてから首を左右に振りながら口を開いた。


「いいえ、やはりアタシは『淫蕩』の罪よ…… 貴女が言った通り、相手の望むままにだらしない行為を続けてきたし、男女関係に対する倫理観の欠如も否定できませんわ…… でも、最大の罪は、アタシの『淫蕩』の結果、あの子達の命まで奪ってしまった事、そしてあの人、アタシの噂を聞いていたにも拘(かかわ)らず結婚してくれたヤドロ、ゴホンゴホン、優しい主人をも酒びたりの乱暴な男に変えてしまった! それが、我、アタシの『淫蕩』が引き起こした最大の罪、贖う(あがなう)事叶わぬ『淫蕩の大罪』なのよ!」


最後は強く宣言したルクスリア、語気だけでなくその瞳にも力を取り戻していたのであった。


「ふーん、まあ二人の息子は生きてるけどね」


「へ?」


「更にアンタの亭主はその二人の息子を育てるために、あんなに溺れ切っていた酒もキッパリやめて身を粉にして必死コイて働いてたけどね、あ! でも、最後の日だけは結構深酒したんだっけかな?」


「え? ええっ? さ、最後の日…… って?」


心配そうに尋ねるルクスリアにコユキは正直に告げる。


「自殺したのよ、手首を包丁で叩き切ってね、アンタに発した失言のセイで、アンタが死んだんだって、自分を責めてね、自分への怒りで死んだんだってよ」


コユキの言葉を聞いたルクスリアは、泣き出しそうな顔になりつつも途切れる様な言葉を口にした。


「や、やっぱり…… 我の、アタシの『淫蕩』ううん、裏切りが、あの人の命まで、奪ってしまった…… やはり…… 許されない、わ」


「うーん、アンタ等って互いに自分が悪い悪いってそればっかね! 似たもの夫婦ってヤツかねぇ? まあ、気に病んじゃうなら直接話し合ってみれば良いんじゃないの?」


「ち、直接?」


コユキの提案が余程意外だったのだろう、垂れ目を大きく見開いて驚いていた。


「はぁっ? なんでアンタ知らないのよ? 五階にいたわよ、あんたの旦那、『憤怒のイラ』って、知ってんでしょ? 同じ店子(たなこ)同士なんだし」


「え、イラ? まさか、そんな…… 気付かなかった…… いつもローブのフードを目深に被っていたから……」


「ま、今度会ったらゆっくり話してみる事ね! 本当、夫婦喧嘩は犬も喰わないってのはこの事ね、やれやれだわ!」


「イラ、憤怒の大罪が…… あの人…… あの人が、ずっと近くにいた? ああ……」

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