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「……パーティ、しませんか?」
「パーティ?!」
「クリスマス、結局みんなで一緒にいられないし。年末くらい、楽しく過ごしたいじゃないっすか」
「……いいね、りゅうせい。しよう! パーティ!」
興味なさそうに見えて、やっぱり俺のことを少しは心配してくれていたんだろうか。本当に優しいな、りゅうせいは。
「引っ越し祝いも兼ねて、だな」
だいきが景気良く肩を叩く。
「え、引っ越し……するんすか?」
「え、うん」
久々に、ちゃんとりゅうせいと目が合った気がする。さっきの離婚の真相じゃなくて、なんで引っ越すことの方にそんなに驚いてるんだ。まあ、そういう抜けてるところもりゅうせいらしくて可愛いけれど。
「……寂しいっすね」
「……なんで?」
期待を込めて、りゅうせいの顔を覗き込む。俺もな、たぶん今、お前と同じことを考えてる。あそこで始まって、あそこで終わった。俺とりゅうせいの思い出は、あのアパートに詰まってるから。
「……玄関開けたら、2秒でちんこ」
「俺かよ! 俺の話かよ!」
「え、なにそれ?!」とだいきが身を乗り出してくる。……俺との思い出じゃなくて、いっちゃんの「ちんこ」の方がインパクト強かったのかよ。それはそれで、なんだかおもしろくなってくる。
「次の休みの前日でいいっすか? お泊まりの方が楽しいし」
「なんでそんなに俺んち泊まりたがるんだよ。あんな何もない狭い部屋の、どこが楽しいんだよ」
また「修学旅行みたい」なんて言って、色々と問題を起こしそうだ。あの日を思い出して、少し怖くなってきた。
「だって、あのいつきくんのテリトリーに入れてもらえるのって、特別感があってめっちゃ嬉しくないっすか?」
「ん? 『あの』ってなんだよ」
「確かに、俺もわかる気がする。いつきくんって不思議なんだよね。優しくしてくれるから踏み込もうとするんだけど、どこかに『拒絶』じゃない空間があって……こう、磁石のS極同士みたいに、ふわって、押し返される感じ」
「あ、わかります! その感覚! かわされるんですよね、ふわって」
「なんなんだよ、それ。本人が一番わかってないんだけど」
俺を置いて、三人で勝手に盛り上がっている。なんだ? 本性を見せていないとか、本当は上辺だけだとか、そういう話なのか? 俺は全然、そんなつもりはないんだけど。
「みんないつきくんが大好きだってこと、わかった?」
「……なんか、全然違う気がするけど」
だいきが急に甘えた上目遣いモードになったので、思わず身を引いた。距離が近いし、りゅうせいもいるのに、変に勘違いされたらどうするんだ。……いや、あいつはもう、俺に興味なんてないのかもしれないけれど。
それでも、良かった。
俺のことを腫れ物扱いしてるんじゃなくて、純粋にそばにいたいと思ってくれていたんだな。
「ありがとう。……お前らの優しさに、毎日助けられてるよ」
心からの言葉が、冬の冷たい空気の中に、ふわりと溶けていった。