ロストワンの号哭 白布 賢二郎
いつだって
「問題ない」
そう言えるように
俺はここに立ってきた
正解を外さないこと
それが
セッターの仕事だと
教えられてきた
「宿題は終わっている」
何度もなぞった勝ち筋
高さと力の答え
だから今日も
迷わず
同じ場所へトスを上げる
「黒板の文字みたいに」
ずっと消えなかった正解が
相手の指先ひとつで
簡単に乱れていく
想定外なんて
なかったはずなのに
「教えて 教えてよ」
「それでも僕らは間違ってない?」
一番確率の高い選択が
最後の一点を取り切れないなら
「正解ばかり集めた僕は」
「何を捨ててきたんだろう」
ボールが
床に落ちる
チャイムみたいに
試合の終わりを告げる音
誰も何も
言わないまま
俺だけが手の感覚を失っていく
「成績表みたいなスコア」
そこに残ったのは
敗北の二文字
間違えなかった
それでも
合格じゃなかった
「答えて 答えてよ」
正解を守るだけじゃ
届かない場所があるなら
俺は次に
何を信じて
この手で
何を選べばいい?







