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魔界の森の奥にひっそりと佇む屋敷。かつては朽ちかけていたが、今では最低限の整備がされ、それなりに住み心地の良い場所となっていた。


セリオは屋敷の庭で剣を振っていた。

死霊となった今、鍛錬に意味があるかは疑問だったが、それでも戦いの勘を鈍らせたくはなかった。何より、剣を振ることで自身の存在を確認しているような気がした。

そんな彼の背後から、足音が近づく。


「お前、またそんなことをしているのね」


リゼリアの声だった。

セリオは手を止め、振り返る。


「別にいいだろう。それより、何かあったのか?」 

「ええ。どうやら、お前に会いたがっている客がいるみたいよ」

「客?」


魔界に知り合いがいるわけでもない。訝しむセリオに、リゼリアは肩をすくめる。


「まだ遠くにいるけれど、こちらへ向かってきているわ。魔族ね。それもただの魔族じゃない……かなりの大物よ」

「……なるほど」


セリオは剣を鞘に納め、屋敷の門へと向かう。リゼリアと並んで立ち、木々の向こうを見る。


やがて、森の中から一人の魔族が姿を現した。

優雅な足取りで歩いてくるのは、長い黒髪をなびかせ、深紅のドレスをまとった美女。赤い瞳が妖しく光り、ただそこにいるだけで周囲の魔力が揺らいでいる。

それは、圧倒的な力を持つ者の証。


やがて彼女は門の前で立ち止まり、ふんわりと微笑んだ。


「久しぶりね、セリオ・グラディオン」


その声音に、セリオの表情が僅かに強張る。


「……エルミナ・ヴァルグリム」


魔王の後継者。かつて、人間だった頃のセリオもその名を知っていた。

だが、セリオには彼女との個人的な接点の記憶がない。


「覚えていないのね」


エルミナはくすりと笑った。


「まあ当然かしら。あなた、今回で五回目の復活だものね」


その言葉に、セリオの眉が動いた。


(……知っているのか。だが、どこまで……)


セリオは鸚鵡返しに尋ねた。


「……五回目?」

「そうよ。あなたはリゼリアによって何度も蘇っているの。だけど、毎回記憶を失ってしまう」


エルミナはリゼリアを一瞥し、口元に笑みを浮かべる。


「ふふ、お前も懲りないわね、リゼリア。何度も彼を呼び戻して、一体どうするつもり?」

「お前に答える義理はないわ」


リゼリアが警戒の色を濃くする。

エルミナは再びセリオを見つめた。


「あなたが生きていた頃、私は一度だけあなたと会ったことがあるのよ」

「……そうなのか?」

「ええ。もっとも、あなたにとっては些細なことだったでしょうけれど」


エルミナの言葉にはどこか含みがあった。

セリオは記憶を辿ろうとするが、当然ながら思い出せない。


「それで? お前がわざわざここに来た理由は何だ?」


セリオの問いに、エルミナは微笑む。 


「決まっているでしょう? あなたの価値を確かめに来たのよ、セリオ・グラディオン。五度も蘇るに値する男なのかどうか」


静かな空気の中、黄金の瞳がセリオを射抜くように見つめる。

それは、試される者に向ける目だった。


(……やれやれ、厄介なことになりそうだ)


セリオは静かに息を吐いた。


穏やかな日々は、まだまだ訪れそうにない。

死せる勇者、魔界で生きる 〜蘇った俺はただ静かに暮らしたい〜

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