ボイストレーニング

阿部が渡辺のそばについてると言う。目黒が事務所で見せてもらったら、それは葉書で、同じ人物が書いたと思われる。

先週から届いている葉書。

内容は、渡辺が言った通り。

目黒は、全部もらって皆んなの元に帰って来た。

皆んなが見ても、同じ人物が書いたものだと言う。

昨日、届いた葉書には、目黒がメインボーカルに相応しいと書いてある。それと、渡辺にグループから抜けろとある。

佐久間ーこんなの書く時間があるなら、翔太を応援する葉書を書けよ。

岩本ー目黒、こっちの葉書は何だ？

目黒ー翔太くんへの応援のメッセージだよ。これ見たらちょっとは元気になるかなって。

向井ーそれ、見せたらええやん。

阿部ーめめ、翔太が呼んでる。

目黒ー起きた？

阿部ー泣いて、めめを探してる。

目黒ーすぐ行く。

楽屋に入ると、渡辺がポロポロ泣いて目黒の名前を呼んでいた。

目黒ー翔太くん。

渡辺ーそばにいなかった。

目黒ー事務所行くって言ったでしょ？

渡辺ー俺のこと、ホントだっただろ？

目黒ーはい、これ。応援の葉書。

渡辺ー応援？

目黒ーあんな悪口の葉書ばかりじゃないんだよ、これは翔太くんを応援してる葉書。読んで？

1枚、1枚と読んでいく渡辺。

その目には涙が滲んでいる。

大事に胸に抱え泣いてしまった。

目黒ーあんな悪口書いてるのは1人だったよ。応援は、こんなに皆んなから届いている。

渡辺ー俺、唄っていい？

目黒ー翔太くんしか唄えないよ。

渡辺ーんっ・・。

目黒ーまた言わなかったね。誓約書覚えてるよね？

渡辺ー知らない。

目黒ーまたゆっくり考える。スタジオ行ける？

渡辺ーん。

目黒と渡辺が楽屋から出てきた。

皆んな集まって来る。

渡辺は踊れると言ったが、岩本が許さなかった。見学である。

曲に合わせて唄っている。

ちゃんと唄えてる。

それでも、葉書は毎日のように届く。内容もいつも同じ。

誰が出したか分からない。

犯人探しをするつもりはないけれど、渡辺が自信を無くしている。

渡辺の歌が好きだという声が圧倒的に多い。それでも渡辺は批判の声を聞いてしまうのだ。

その度に泣く。

相変わらず、食べれてない。

体力がないから、声量も低い。

上手く唄えなくて当然だ。

目黒の家で、晩ご飯を食べる。

お粥。渡辺の嫌いなお粥。

白身魚の身をほぐして卵で閉じる。

大葉を刻んで乗せる。

ゆっくりだけど食べてる。

渡辺ー目黒、肉食べたい。

目黒ー無理。

渡辺ー食べたいの！

目黒ー無理だって言ったでしょ？

渡辺ー明日食べたい。

目黒ー明日もお粥。

渡辺ーもう！

目黒ーそんなに痩せるから仕方ないでしょ？

渡辺ーごめんって言った！

目黒ー誓約書あるからね。

渡辺ーやだ！

何がなんでも肉が食べたいわけじゃない。お粥に飽きたのだ。

自分が悪いと分かっているから、食べてるだけで、もっと違うものが食べたい。

岩本と佐久間がやって来た。

佐久間が言うには、晩ご飯は目黒の言う通りのものを食べるしかない。だからデザートを持って来た。

渡辺ー照は、チョコだろ？佐久間は？

佐久間ー俺はレアチーズ。

渡辺ー目黒は？

目黒ー翔太くんは、イチゴアラモードね、俺はティラミスね。

渡辺ー食べていい？いい？

目黒ーどうぞ。

渡辺ー美味しい〜。

目黒ー気分悪くならない？

渡辺ー大丈夫だ。

久しぶりにお粥以外を食べれて嬉しい渡辺。

お粥はまだ残っているのに、デザートは完食した。