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「無粋な事を言うけど、ウエディングドレスのままするのって、夢だよな」
私は尊さんの言いたい事を察し、ケラケラ笑う。
「やだもー。男の浪漫ですか?」
「考えた事ないか?」
「うーん、ちょっとは。神聖なものだから余計に背徳感がありますよね。気持ちは分かります。……でも実際、凄く着込んでる訳だから、汗掻いて凄そう」
「確かに」
そんな感じで、私たちは道中たわいのない話をして過ごしたのだった。
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首都高にのって四十分ほどで道庭に着き、私たちは墓地の駐車場で車から降りる。
墓地の周囲は畑が多くてだだっ広く、武蔵野線を挟んだ向こうには大型商業施設など、大きな建物が並んでいる。
今日は移動が多いので楽な格好と思い、白Tにスウェット生地のライトグレーのロングタイトスカート、日焼け防止にアームカバーをつけてつば広の帽子を被り、茶系のサングラスをしている。
尊さんはサラッと白Tにデニム、青系のサングラスだ。さわやかさんめ。
「あっちに水やりの柄杓とかあるんです」
駐車場を歩きながら指さすと、尊さんが笑う。
「水やりって、花じゃねぇんだから」
さすがお盆時期なだけあり、今日もとても暑い。
三十二度ぐらいにはなるらしく、アスファルトの近くがユラユラして見える。
今日は各地のお墓を巡る旅なので、母たちも持って来ていると思うけれど、お線香やお花、お供え物に雑巾や箒、ちりとりなど一式を持って来た。
なので後部座席はお花で一杯だ。
さすがに京都のお墓参りは現地で買うけれど、三箇所分を載せてきた。
尊さんは桶に水を汲み、他の道具も持ってくれている。
私はお花を持ち、上村家のお墓を目指した。
「おはよー」
そこにはすでに母たちがいて、私はみんなに声を掛ける。
「おはよう、朱里」
「おはよう」
母と継父はすぐに挨拶をくれ、亮平と美奈歩は軽く会釈する。
「あら、そんなに立派なお花を持って来てくれたの?」
「尊さんが買ってくれたの」
「篠宮さん、今回はご多忙な中、ありがとうございます」
「いえ、皆さんにご挨拶できて嬉しいです」
彼は爽やかに対応し、他のみんなにも明るく挨拶をする。
すっかり尊さん信者になった亮平は、嬉しそうな顔をして彼に話しかけた。
「おはよ、美奈歩」
「……うん。おはよう」
美奈歩はピンクブラウンの髪を纏め、小花柄のヒラヒラしたワンピースを着ている。可愛い。
「これあげる」
私は持って来ていた紙袋を彼女に渡す。
「行きつけの美容師さんがオススメしてくれた、ヘアミストでね。めっちゃ髪がツルサラになるよ! ただ、コーティング力が強いから、髪から離したところで控えめにトリガー押してね。ワンプッシュだけで、かなり広範囲に揉み込めるから」
「……ありがとう」
「ワンピース可愛いね! 美奈歩、そういうの似合うと思うよ」
「……うん、ありがと」
グイグイ話しかけてプレゼントし、褒めていくと、何となく最初に感じた〝やりづらさ〟みたいな雰囲気が和らいだ。
今までの蟠りがあったから、すぐに笑顔で接するのは難しいかもだけど、尊さんにコツを教えてもらった対人スキルでなんとかできたみたいだ。
そのあと、お墓を拭いて掃き掃除もして、お花を飾ってお供え物をしてから、お線香に火をつけて順番にお参りした。
上村家の祖父母の家は三郷市にあり、みんなでドーッと押しかけてお仏壇に手を合わせ、三十分ぐらい話をした。
あちらの祖父母は私と母を受け入れてくれていて、息子――継父と亮平、美奈歩が納得してみんなで幸せになれているなら、問題ないと考えてくれている。
尊さんは〝外〟向けの笑顔でニコニコ気さくに接するので、すぐに気に入られたようだった。
そしてエッホエッホと、すぐに名都借に向かう。
江戸川を超えると千葉県で、次の目的地までは三十分ぐらいだ。
今度はお寺の敷地内にあるお墓で、春のお彼岸の時には立派な枝垂れ桜が見られる所だ。