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酷く落ち着き払った重低音の声はレイブやアスタロトが立っている地面の遥か奥底から届けられたかの様に、周囲の空気を震わせたのである。
「え、だ、誰?」
『テューポーンか? どうした?』
『御下命の通り魔物どもは排除しましたが…… 一向に失せないこの場の魔力、その原因と思われる存在が近付いているようです…… 如何致しましょうか? 喰っても構いませんか?』
地の底から響く声は聞いているだけで奥歯が浮いてカタカタと震えるような、えもいわれぬ恐怖心を掻き立て続けている。
レイブは自分の足元をキョロキョロと見回して不安そうな表情を浮かべつつ、今も尚見渡す限りの平原の上空まで触手を伸ばし、ウネウネと蠢いているテューポーン御一行様の不気味な姿をチラ見しながら、縋る様な声でアスタロトに言う。
「あの~、アスタ様、なんかテューポーンさん達の声が下から聞こえますけど…… 俺下っ腹に響いて何か不安なんですけど…… 出来れば姿が見えてる上空から話して貰った方が楽そうなんですけどぉ~、頼んで貰っても良いですかね? わがまま言ってすみません、玉的に辛くて、玉的に……」
だそうだ…… ってか玉的って何だよ、まあ判るけどね……
皆さんに判り易く言うと絶叫マシンの落下時だとか不意に遭遇するチン寒ロード的なヤツだと思われた。
アスタロトは左の掌を丸めた右手で叩いてポンと鳴らすと答えてくれる。
『ああ~玉的にな! というかテューポーン達? 達って何だ? まあ大事な事を先に片付けておくか、ああー、テューポーン? その近付いてくるヤツ、魔物じゃないなら食べてはいかんぞっ! おけい?』
『承知いた――――』
ビックッ!(レイブの玉周辺)
『おお、おおぉ! 下から話し掛けると我のレイブがビクビクしてしまうじゃないかぁ! 取り敢えずお前出て来いよ! ああっ、勿論標準のニンゲンサイズでだぞ! 収束してから出てくるが良い!』
『…………』
アスタロトの厳しくも気の利いた注意が功を奏したのか、テューポーン達は返事すら憚った感じで、無言のままではっきりと目に見える変化をし始めたのである。
具体的には中天を翳らせるほど伸び捲っていた百本ほどの巨大な触手の全てが、見る見る間に細く短く縮小されて、レイブやアスタロトの目の前の地面の中へと消え去って行くのであった。
丁度成人一人が縦に直立して隠れるられる程の、小穴だけが残った地面から、図太い指が覗いたと思った次の瞬間、逞しいニンゲンの男性型をしたモノが両手で地面を押して、筋骨隆々の姿を表したのである。