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人型のモノは、体に付いた土を両手で払うと、片膝を付いた姿勢で頭を垂れ、両の手を真っ直ぐに差し出しながら言葉を発する。
『拝謁の栄誉を賜り身に余る光栄でございます、マラナ・タ』
レイブは思った。
――――ほう! 動作と言っている言葉の意味は良く判らないけど、何と無く礼儀正しい人みたいだなぁ…… 人? ヒトかな? 似てはいるけどぉ…… あっ! 頭には毛が無いなぁ、代わりに何か蛇的な管が動いているみたいだけど? あれってぇ…… うんっ、あれってさっきまでウニョウニョしながらモンスターを食べていたテューポーンさん達とそっくりだな! え? しゅ、収束? って、若しかして、てゅ、テューポーンさん、かな?
『依り代に選ばれた栄誉にお祝いを申し上げます、レイブ殿、ペトラ殿、ギレスラ殿! 我が君の一兵卒、テューポーンめにございます、以後お見知り置きを……』
「あ、はい、こちらこそよろしく! あの、えっと…… あ、アスタ様? このお方は?」
『孫娘の亭主、テューポーンだぞ』
「やっぱり…… あ、あぅ……」
つい先程まで見た事も聞いた事も無い殺戮ショーを繰り広げていた本人を前に、固まっているレイブの足元には、いつの間にか正気を取り戻したペトラとギレスラがしっかりと寄り添い、スリーマンセルらしく体の震えをシンクロさせてカタカタと小刻みに蠢くのであった。
そんな彼等を気にするでもなくアスタロトとテューポーン御一行改め、テューポーンさんの会話は進む。
『んでテューポーンよ、モンスターどものスタンピート、狂乱の原因になったヤツとは一体何なのだ?』
『そうですね~、しかとは判りませんが恐らく馬鹿状態の悪魔、かなりの大物かぁ、若しくはあれじゃないですかね? 竜でしたっけ? ほら、昔、結城さんと吹木さんが量産した爬虫類の進化種! あれが魔力に毒されたとかじゃないですかね? 我が君?』
『なる…… モンスター達はそれから逃げていたって訳――――』
「じゃっ、邪竜だあぁーっ! 総員避難だあぁーっ! 学院の地下へ緊急避難っ! てんでんこっ! てんでんこで避難んっー! 邪竜っー! 邪っ竜ぅっー!」
アスタロトの言葉を遮るように、響いた悲鳴のような叫びは東壁の上を任されたシエル教授の物であった。
この声を切欠に、学院を守ろうと必死の覚悟を決めて集っていた筈の、魔術師、魔獣、竜種の全てが思い思いに避難、逃げ始めたのである。
理由は簡単だ。
魔術師だけでなく、闘竜も獣奴も同様にその道を目指す第一歩で宣誓させられる誓いが二つ有るからに他ならない。
折角の機会だ、ご紹介しておこう。
一、虚飾を求めず心中の豊潤こそを求めよ、我等の窮乏は即ち他者の安穏と知るべし。
一、邪竜はとにかく駄目だ、見たら逃げろ! 絶対! 邪竜、即、逃亡! 駄目絶対っ!
お分かり頂けただろうか?
二つの誓いの言い口の違いからその必死さが伝われば良いのだが……