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#高校生
第26話 「静かなスタンド」
夏季県高校野球大会二回戦。
柳城高校の相手は、東筑紫学園。
春の県大会ベスト4。
打力のあるチームだった。
試合前。
ベンチ裏。
小早川啓介はキャッチャー道具を静かに整えていた。
そこへ舞が来る。
「はい、水」
「ありがと」
舞は少しだけ啓介の顔を見る。
「緊張してる?」
啓介は苦笑した。
「毎試合してる」
「キャプテンでも?」
「キャプテンでも」
その言葉に、舞は少し笑った。
球場へ向かう。
スタンドは、やはり静かだった。
吹奏楽はない。
応援団もいない。
あるのは、選手たちの声だけ。
だが逆に、それが緊張感を強くしていた。
「整列!!」
礼。
――プレイボール。
初回。
東筑紫学園の攻撃。
いきなり長打。
無死二塁。
球場がざわつく。
打席は三番。
小早川はマウンドへ向かう。
「慌てなくていいです」
エースが深く頷く。
初球。
外角。
見逃し。
二球目。
低め。
空振り。
追い込む。
三球目。
インコース。
詰まらせた。
――セカンドゴロ。
進塁は許したが、一死三塁。
次打者。
スクイズ構え。
小早川の目が変わる。
(来る……!)
投球。
バント。
だが小フライ。
小早川が飛び込む。
捕球!!
そのまま三塁へ送球。
アウト!!
ダブルプレー。
柳城ベンチが大きく沸く。
「しゃあああ!!」
福間監督も小さく頷く。
流れが変わる。
三回裏。
柳城の攻撃。
一死一二塁。
打席には小早川。
相手ベンチが前進守備を敷く。
初球。
ストレート。
振り抜く。
――カキン!!
打球は三遊間を破る。
先制タイムリー。
1対0。
さらに追加点。
この夏の柳城は、簡単に流れを渡さない。
中盤。
東筑紫学園も反撃する。
6回。
二死満塁。
球場が静まり返る。
打席は四番。
小早川はマウンドへ向かう。
「勝負しましょう」
エースが頷く。
戻る。
ミットを低く構える。
初球。
ストライク。
二球目。
ファウル。
追い込む。
三球目。
外角低め。
振った。
――空振り三振!!
柳城ベンチが飛び出す。
「よっしゃあ!!」
最終回。
柳城は最後まで守り切った。
ゲームセット。
柳城高校 3―1 東筑紫学園。
ベスト8進出。
整列後。
スタンドから、小さな拍手が響く。
大歓声ではない。
でも、その拍手には確かな想いがあった。
試合後。
球場外。
おっちゃんとおばちゃんが待っていた。
「強かなぁ今年!」
「次も勝てるばい!」
部員たちが笑う。
その少し後ろ。
立花理事長も静かに試合を見ていた。
福間監督へ近づく。
「本当に変わったな、柳城」
福間監督はグラウンドを見る。
「まだ途中です」
その目は、もう次を見ていた。
夏は止まらない。
柳城高校の快進撃も、まだ終わらなかった。
第26話 終
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