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ピザの湯気が、まだ残っている。
皿の上は、もうほとんど空だった。
「……食い過ぎだろ」
思わず言う。
ノスフェラトゥは無言。
だが、視線はまだ皿に落ちている。
「……」
いつもなら、そこで終わりのはずだった。
食べて、終わり。
それだけ。
なのに。
「……もう一度」
ぽつりと、言う。
「作れ」
「……は?」
思わず聞き返す。
「今のを」
視線が上がる。
まっすぐ。
「もう一度だ」
「……」
数秒、沈黙。
そして。
「……はは」
思わず、笑いが漏れる。
「なんだよ、それ」
肩を揺らす。
「気に入ったのか?」
ノスフェラトゥは答えない。
だが。
ほんのわずかに、間を置いてから。
「……否定はしない」
「……素直じゃねぇな」
軽く笑う。
だが。
その内側で、何かが引っかかる。
さっきまで“餌”だったはずの自分に、
“もう一度作れ”と要求してくる存在。
それは――
明らかに、変化だった。
「……材料減るぞ」
「用意しよう」
即答。
「……マジかよ」
呆れたように言う。
だが。
嫌じゃない。
むしろ。
「……分かったよ」
軽く息を吐く。
「その代わり」
指を一本立てる。
「ただ食うだけじゃなくて、覚えろ」
「……?」
「どうやって作るか」
生地を軽く叩く。
「次はお前もやれ」
ノスフェラトゥの眉が、わずかに動く。
「……必要か?」
「ある」
即答。
「どうせまた食いたくなるだろ」
少しだけ、意地悪く笑う。
「そのたびに俺に頼るのか?」
「……」
沈黙。
だが。
その沈黙は――否定じゃない。
「……いいだろう」
短く答える。
「覚える」
「……は?」
今度はこっちが驚く番だった。
「マジで?」
「言ったはずだ」
淡々と。
「面白い、と」
「……」
少しだけ、目を細める。
この吸血鬼は――
本気だ。
「……変なやつ」
呟きながら、もう一度粉に手を伸ばす。
「……でもまぁ」
小さく、笑う。
「悪くねぇな」
こねる。
その横で。
ノスフェラトゥが、同じように手を動かす。
ぎこちない。
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明らかに慣れていない。
「違う違う、力入れすぎ」
思わず手を取る。
「もっとこう……」
その瞬間。
――止まる。
「……」
距離が、近い。
手を掴んでいる。
さっきとは違う意味での接触。
「……」
ノスフェラトゥも、動かない。
赤い瞳が、わずかに揺れる。
だが。
今回は――
牙は出ない。
「……ちゃんとやれよ」
先に、手を離す。
少しだけ、視線を逸らす。
「……分かっている」
低い声。
だが、どこか静かだった。
焼き上がる。
また、あの匂い。
今度は、さっきより少しだけ形が歪だ。
「……下手くそ」
「……初めてだ」
「言い訳かよ」
軽口。
だが。
空気は、柔らかい。
さっきよりも。