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──次の日の朝早くに、カイの携帯が鳴った。
急いで目を覚まして確認をすると、昨夜言っていたようにやはり相手はマネージャーからで、私はカイを揺り起こした。
「カイ…起きて! マネージャーからコールが入ってるから…ほら!」
体を揺すぶって起こすと、彼は目を見開いて、ぼーっとしたままで電話に出た。
「……うん、わかった……起きたから……うん、じゃあ二時間後に……」
切って、また寝ようとするのを、
「ほら…寝たら、ダメだってば……!」
と、上半身を支えて、起き上がらせる。
「ん……」
寝ぼけ眼でまだぼんやりとしているカイを、
「家に帰らないといけないんでしょう?」
早く早くと、急き立てる。
「うん…帰って、シャワーでも浴びないと……」
そう呟くカイの腰に腕を回して立たせると、
「シャワーもするんなら、さっさと行かないと……」
その体を半ば引きずるようにして、玄関へと連れて行った。
玄関の上がり口に座り込んで、ショートブーツの紐を結ぶ後ろ姿に、
「帰れるの? 大丈夫?」と、つい心配で尋ねると、「うん、大丈夫…」と、返事が戻った。
「ここから、タクシーで帰るから……」
「そう、気をつけて帰ってね」
「わかった……」
靴を履き終えて、行きかけた彼が、
「…キス、したい…ミク……行く前に…」
ふいにそう口にして、こちらに頭を振り返らせた。
「……もう、しょうがないな」
わざと仕方なさげに応じたのは、顔が赤くなるのを隠せなかったからだった。
背の高いカイに、少しだけ爪先立つようにして、キスをした。
「ん…ミクルの唇…気もち、いぃ…」
抱きついて、耳のそばで吐息混じりに声を漏らすカイに、
さらに真っ赤になりそうにもなって、
「早く行きなってば…もう…」と、彼の背中を押し出した。
「じゃあ、また…」
カイが軽く手を振ると、私の部屋のドアを出ていった──。