コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
吸収するとか聞こえたがそれもフィーサのスキルの一つだろうか?
首傾けのシーニャを見る限り、初めて見る動きのようだ。フィーサの斬撃ですでに赤竜は瀕死状態に陥った。そう判断しておれたちも竜の近くに近づいた。息も絶え絶えなようでいつ絶命してもおかしくない状態だ。
そんな状態の竜に対し、鋭い刃に変形させているフィーサの腕が容赦なく竜に突き刺さる。直後、竜の全身は跡形も無く消えてしまった。
「お、おい……フィーサ」
「……終えた。全てわたしの中に吸収したよ、イスティさま」
いつもの彼女らしからぬ冷酷な表情が垣間見えたが、その表情はすぐに消え失せていた。人化状態だからでは無さそうだが、フィーサ単独での強さの一端を見た気がする。
道を塞いでいた竜の姿は消失、存在そのものがフィーサに取り込まれた。その光景にルティ、シーニャも言葉を失っていた。
吸収したことでフィーサの潜在的な強さがどう変化したのかは、現時点で見ることが出来ない。それが見えていないということは、まだ彼女を使いこなせていないということなのかも。
「まぁ、何だ。これであの頑丈そうな門に近づくことが出来るわけだな!」
「ウニャッ! 町に行くのだ」
「そ、そうですよ~!」
「ふわぁぁ……イスティさま。わたし、剣に戻るね」
「また眠るのか?」
とてつもない強さを引き出した反動だろうか?
「ううん、起きたまま剣に戻るの」
「分かった。その時になったらまた使用するからな」
温泉の効果なのか元から容赦のない面があったのかは分からないが、フィーサはなるべく大切に扱うことにしよう。
◇◇
迷うことのない一本道。
町に近づく前に赤い竜が立ち塞がっていたが、神剣フィーサの攻撃で難なく過ごせた。数メートル先に見えるのは、何の変哲もなさそうな鉄製の門だ。見張りもいなく魔法による防御壁も感じられない。
赤竜が町への侵入を長らく阻んでいたと思われるが、果たして素直に町へ入ることが出来るかどうか。
「アック様、アック様! もう大丈夫じゃないでしょうか~?」
「ここから見た感じはそうだろうが、ルティは何も感じないのか?」
「んんん~……風は感じませんよ~」
「……それだけじゃないんだが」
ルティにはそういう素質は無さそうだな。
「ウゥゥ……!! ドワーフはアテにならないのだ。アック、何かがたくさん出て来るのだ!」
「――! 複数の魔術師だな?」
「え~!? どうして素直に町へ入れてくれないんですかぁ~!」
ルティは残念そうにうなだれているが、シーニャはすでに戦闘態勢。鉄製の外門には、四、五人の魔術師らしき人間が立っている。
全員が灰色のローブをまとい、フードで顔を隠しているが、そのせいで表情はうかがい知れない。性別も不明だが、どうやらこちらに対し明らかな敵意を向けてきている。
「――ウウウウ!」
「あれは何だ? 魔術……いや、テイムか?」
「け、獣を何匹もですか!? ズルい、ズルすぎますよ~!」
「待て、テイムじゃない」
数メートル程度ではあるが、奴らは妙な手の動きをしているようだ。その動きの後、何も無い所から獣人らしきモノを呼び出している。
「……イスティさま」
「ん?」
「あれらはテイムなんかじゃないなの。魔法攻撃は感じられないから、まずはシーニャを戦わせてみるのが一番だと思うなの!」
「シーニャを?」
「獣人相手ならそれが最適なの」
フィーサの口ぶりでは奴らが何をしているのか分かっていそうだが、ここは様子を見てから動くことにする。
「よし、シーニャ。心なき獣人を軽く捻ってやれ!」
「ウウニャ!!」