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ぱち,と目が覚めた。
時刻は正午、ちょうど十二時らしい。薬を飲むのを忘れた体はとても重く
早めに起きなくてよかったなぁとまだ寝ぼけた顔で思う。
起立性調節障害。まぁ、通称OD。交配神経がバグるとなる思春期男子女子に多い神経障害。
まだどこか吐き気を感じる体を起こしながら、スマホをカバンから取り出して
モゾモゾと布団の中に入る。
ん〜。だるい。なんかな〜…
スマホに表示された何件もの応援通知。ありがたいことにその数は二桁を邑に超えていて
たくさんの人が僕のTwitterやコメント,小説サイトなどを使って応援してくれる。
あの話がよかっただとか、あのシーンが感動したとか、文の参考になるだとか。
…最後のはちょっと意味わからないが。
こんな何もわからないようなダラダラしてるだけの不登校ガキが書いたような小説なんか
何の参考にもならないのにな。世の中変な人はいるもんだ
スワイプをして下までバーーーっと応援コメントを読んでいく。
こういうのはありがたいからちゃんと一件一件読んでたまにファボしたりする。
その中で,一件のコメントが目に止まった。
アイコンは何かの漫画のイラストで、
名前がSAHIA。
文体と名前ですぐに旭だと理解できた。安直すぎるだろ,お前。
そう思いながらもめんどくさいことには変わりなかったので、適当に画面を閉じる。
ベッドを枕元に放り投げて,天井を見つめた。
12時だと言うのに起きたばかりでお腹は空いていない。
今頃みんなは昼食前といったところだろう、うちの学校は確か一時から昼が始まる。
わけわかんねぇんだよな,12時からだろって
まぁ関係ないけど
はぁ、とため息をついてシャッとカーテンを閉めた。
バウンドで起き上がったから少しむせる。
そんなのも蔑ろに僕は椅子に座りペンを握った。
今日は小説ではなく、歌詞を書く。
僕は小説の他にも音楽とか…まぁ、まぁいろんなことをしている。
その中の一つの趣味が音楽制作。
…とは言っても、こちらは三千人ほどの登録者でちまちまとやっているような感じだ。
三千人だけでも立派な音楽作家じゃん、って言うか三千人いんのすごくねとこの間御嶽さんに
言われたが、こっちは本当に適当にかの有名な初音ミクや鏡音リン・レンを使いながら
適当に音楽作って適当に歌詞貼り付けてるだけの個人垢だ。
大手にはしないしなりたくもない。
小説の最初は完全に個人垢としてただの暇つぶしとして楽しむはずだった。
…今は沢山の人が僕の小説を読むのを楽しみに待っていて、僕はあんまり楽しくないが。
大手っていうものは名前があるから責任を背負わなきゃいけない。
そんな面倒くさいこと絶対にごめんだ、僕は将来胸を張って生きる予定もないんだ。
ブツブツ誰かに文句でもいうようにそんなことを考えて、手は動かす。
頭の中で何かを考えながら書くほど適当に、適当に。
「言葉なんて」という歌詞を書いたところで、手が止まった。
言葉が連なった文を書いている身としてこの表現はどうなのか、なんて声が聞こえた気がして。
…しかし書いてしまったものは仕方がないだろう。適当にやってんだ、歌詞は全部一発書き。
それをルールに個人垢で楽しんでるんだからそんなの自由じゃんか。
はぁ、とため息をつく。
今まで吐かれた僕の息の中に、どれだけの僕が詰まっているんだろうか。
時折このように聞こえてくる僕を何かと批判したがる幻聴はなんなのか。
…何も、わからないな。
目を伏せてギッと椅子に深く腰掛ける。そのまま目を閉じた後、上を見た。
なんもない、何の変哲もないただの天井だ。
僕の家。
誰もいない、誰も来たがらない、僕の家だ。
何となしにボケーっとして口が空いていることに気がつく。
んー、と伸びを半端にしてまた机にガリガリと文字を書き始める。
…こんな事しても、何の意味もないというのに。
いやいやいや、趣味に感情を持ち込むのは良くない。
楽しくやりたいんだから楽しくいよう、と自分に言い聞かせて認めさせるように歌詞を書き続けた。