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その後、長い電車と地下鉄を通り抜け、隣町の祭にたどり着いた。
「さすが有名な祭りなだけあって賑わってるね…」
祭りを楽しむ声、客引きをする店員の声、かき氷を落とし、泣いている少年の声と新しく買い慰めようとしている家族の困り声、様々な声が聞こえ、どれも日常ではなかなか聞けない珍しい騒がしさだった。
レイカ「そ~だねぇ…ねぇるうちゃちゃ!あそこのりんご飴食べたい!」
「はいはい…今行くからそんなに走んないで…」
どんな場所だろうと私の少ないスタミナは既に尽きかけている。私より小さいその体にどれほどの体力が潜んでいるのだろう。
レイカ「りんご飴ってさ、私少し苦手なんだよね」
「ならなんで買ったんだよ…」
レイカ「だってせっかくの祭りだよ?楽しまなきゃ!」
「…変なの。楽しみたいなら好きなことやれば良いのに」
レイカ「そっか…ならかき氷の早食い対決しよ!」
「勝手にやって」
レイカ「好きなことって言ったのに!うそつき!」
「限度があるだろ!」
その後、私達は金魚すくい(私がとりまくったせいで出禁を食らってしまった)に射的。(これまた私のせいで出禁を食らった)それに型抜き(今度は出禁ではないがレイカがとてもきれいにくりぬいていた)チョコバナナやわたあめを食べたり、お昼頃の時間はあっという間にひぐらしのなく夜へと姿を変えた
レイカ「るうちゃちゃすごかったね~射的!バンバンって!」
「これでも弓道部で県大会金賞だからね」
弓にはかなり自信がある。私達の通う学校はまさしく部活校でかなりの強豪校だ。その中でも私は弓道部として一部では名を挙げているのである。
レイカ「代わりに出禁食らったわけだけども…」
「それは…ごめん反省はしてる」
レイカ「だが?」
「後悔はしていない」
私は今年一番のにやついた表情をしたと思う。私の正体も知らずに舐めプしてきたわけだが、的を当て続けた後のあの表情は今も覚えている。
レイカ「なんか…るうちゃちゃすごい楽しそう!」
「え…?私そんなにはしゃいでた?」
レイカ「初めて話したときはさ?すごい迷惑そうな顔してたしめんどくさそうだった」
レイカ「でも今、すんごい楽しそうに笑ったよ!」
「…そっか」
初めて出来た「トモダチ」という感覚が無意識にも嬉しかったのかもしれない。これが友達、これがアオハル。私は青春の大切なものを今、このアホな友人に教えて貰ったのだろう。
レイカ「あっ、みてるうちゃちゃ!!」
「ん?」
ふと指を指された方向を見る
「………きれい…」
満点の星空が目一杯に広がる。あそこにあるのは夏の大三角形だろうか。うるさいセミの音が聞こえなくなるほどに、私はその絵のような星空に見惚れていた。
『バーーーン!!』
そこに大きな花火が舞い上がり、華やかに散っていく。ふと我に返ってレイカの方を見るとレイカは草むらに寝っ転がって私の視線にも気づかず花火と星空を眺めていた。
咲き続ける空に輝く星。すぐ枯れ散っていく星。
そこになにかが写ったのが見える。直に私の鼻になにかが『ポツン』と落ちた。
『ポツン…ポツポツ』
「…雨だ!」
そう気づくと少しずつザーザーと本降りになっていく。
レイカ「ウソでしょ!?ウェザーニュースで晴れって言ってたのに!」
私達は急いで草むらから飛び起き、足早にもう少し後に止まる予定だった旅館に入っていった。