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犬絵りぼん
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ワンクッショ ン
政治的意図
戦争美化
等なし、
『灰の空は、まだ落ちない』
――あの日のこと、今でも焼き付いてる。
⸻
空「……遅いな、陸兄」
海「作戦が長引いているだけだ。お前は少し落ち着け」
空「でもさ、あいつが連絡寄越さないとか、珍しすぎるだろ」
海「……」
空「なあ、海兄。なんか隠してない?」
海「……いや」
空「“いや”って顔じゃないだろ」
⸻
(沈黙)
⸻
空「……冗談だよな?」
海「……空」
空「冗談って言えよ。あいつ、あんなに“すぐ戻る”って――」
海「空」
空「っ、何だよ!!」
海「……陸は、戻らない」
⸻
(世界が止まる)
⸻
空「……は?」
海「任務は成功した。だが――帰還は、叶わなかった」
空「……嘘だ」
海「……」
空「嘘だ嘘だ嘘だ!!あいつが?陸兄が!?あんなに強くて、誰よりも前に立ってたあいつが!?」
海「空、声を――」
空「うるさい!!なんで止めるんだよ!!おかしいだろ!!あいつがいなくなるとか、順番が違うだろ!!」
海「……」
空「俺が行けばよかった……俺が代わりに――」
海「それ以上言うな」
空「なんでだよ!!俺は飛べる!!あいつより速く行けた!!助けられたかもしれない!!」
海「“かもしれない”で、自分を壊すな」
空「壊れてんのはもう全部だろ!!」
⸻
(空が地面を殴る)
⸻
空「……なんでだよ……」
海「……」
空「なんで、陸兄なんだよ……」
海「……俺だって、同じだ」
空「え」
海「俺だって、何度も思った。“なぜあいつで、俺じゃない”と」
空「……海兄」
海「だがな、空。あいつは最後まで、“俺たちの前”に立っていた」
空「……」
海「だからこそ、俺たちは後ろで崩れるわけにはいかない」
空「……そんなの、無理だろ」
海「無理でもだ」
空「っ……」
海「お前が暴れれば、あいつの積み上げたものまで壊れる」
空「……」
海「それでも暴れるか?」
⸻
(長い沈黙)
⸻
空「……っ、くそ……」
海「……」
空「……やめろよ……そんな言い方……」
海「……すまない」
空「……っ……」
⸻
(その日、空は初めて声を殺して泣いた)
⸻
――でも、それで終わりじゃなかった。
⸻
空「海兄、今日はやけに静かだな」
海「……少し、疲れただけだ」
空「嘘つけ。顔色悪いぞ」
海「お前こそ、無理をしているだろう」
空「してねぇよ。俺はまだ飛べる」
海「……そうか」
空「……?」
海「空」
空「ん?」
海「もしもの話だ」
空「またそれかよ」
海「最後まで聞け」
空「……何だよ」
海「もし、俺もいなくなったら――」
空「やめろ」
海「空」
空「やめろって言ってんだろ!!」
海「……」
空「そういうの、縁起でもねぇんだよ」
海「……すまない」
空「……」
海「だが、覚えておけ」
空「……」
海「お前は、“最後”になる」
空「……は?」
海「だから――折れるな」
空「意味わかんねぇこと言うなよ」
海「……そのままの意味だ」
⸻
(その言葉の意味を、理解するのは――少し後だった)
⸻
――そして、海もまた。
⸻
空「……嘘だろ」
(返事はない)
空「なあ、起きろよ」
(静寂)
空「海兄」
(風の音だけが通り過ぎる)
空「……」
⸻
空「……また、俺だけかよ」
⸻
(拳が震える)
⸻
空「……ふざけんなよ」
空「残せって言ったのは、そっちだろ」
空「最後まで立てって言ったのも」
空「折れるなって言ったのも――」
⸻
空「全部、お前だろ」
⸻
(空を見上げる)
⸻
空「……なら」
空「せめて、見てろよ」
空「俺が、どこまで落ちずにいられるか」
空「……証明してやるよ」
⸻
――灰の空は、まだ落ちない。
(続く)