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ガタガタと馬車が揺れる

しかし、中に座っている黒髪の男が揺れる気配はない

足腰に力を入れ、平静を装っているのだ

目の前に見える運転手と、二頭の茶色い馬を眺めながら、男は国王に言われた事を振り返っていた

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「よいか?ブルーメ王国での名は“ジャック”だ」

「ジャック…ですか…」

「名無しという意味だ。意味はない」

「でしょうね」

ジャックは国王にネーミングセンスがないのを知っていた

この国の第一王子の名前を“シュタタム”にしかけた男だ

「無難な方がいいと思ったからな」

「左様ですか」

たわいもない話の後、ジャックは国王から渡された鳥型の紙を複数枚トランクに詰め、必要最低限のブルーメ王国の金銭、二十枚の仮面、生物図鑑と着替えを入れる

しかし、トランクの半分を占領するのは城の他の従業員から貰ったジャックを送り出す手紙であった

余りに多いため、複数枚しか持っていかない予定であったが、申し訳なくなったため無理矢理にでも詰め込んで持っていったのだ

「少し…入れすぎたか…」

心配性のジャックは過去の自分をぶん殴りながらトランクをちらりと見る

半開きになったトランクからはカラフルな便箋が顔を覗かせていた

「ハァ…」

早速憂鬱になってきた

あまりフロース王国から出たことのないジャックにとって、他国への出張は息が詰まるほど苦手な事なのだ

「これが…ホームシック…」

早々に帰りたいという感情に苛まれた

この仕事は考えるほど甘くないというのに…

しばらくすると、色とりどりの宝石で飾られた巨大な城壁が現れた

これは現国王の趣味か…それとも先祖代々か…

世間知らずのジャックには分からないが、軽い吐き気がしたような気がした

「ジャックさん、少々お待ちくだされ」

馬車の運転手にそう言われ、入門するための準備を始めたのだろうと思い、一息する

外では、馬車を運転していた白髪の老人と緑の目を甲冑から覗かせている門番が話し合っている

少々怪訝な顔をされたが、入門審査は無事クリアしたようだ

「ささっ行きましょう」

それからは早かった。いや、ジャックからすればの話だろう

門番なら話が通っていたのか、馬車を降りた後のジャックを出迎えたのは十人前後の長いドレスを着たメイドと灰色の燕尾服を着た執事だった

両脇には騎士も確認できた

「ようこそいらっしゃいました。ジャック様」

「国王の部屋までご案内いたします」

双子のメイドが交互に話す

不思議な雰囲気を纏わせている双子メイドの後についていき、ジャックはブルーメ王国国王の部屋まで案内された

「…来たかね」

「えぇ」

「来たばかりで悪いが、君はこいつの世話係だ」

そう言う国王のデスクの横には、外に跳ねた美しい金髪の少女がいた

第一王女よりも年上に見える

「この子は…」

ジャックはこの子供が国王の言っていた子供なのかと思った

女王が最初に妊娠した期間を考えると、第一王女よりも年上に見えるこの子供こそが第一王女なのではないかと思ったからだ

「名無しだ。適当に呼んでくれ」

「名無し…」

何故だかその言葉が心に引っ掛かる、不快な言葉に感じた

「君の部屋にこれからの仕事に関することが書かれた手紙がある。穴が空くまで見るように」

「はい」


その日1日は、担当になった少女に会うことはなく五枚に束ねられた手紙の内容を暗記するのに時間を使ってしまった

翌日、朝食の時間に双子メイドの片方に連れていかれ国王、国王妃、第一王女と第二王女と最後に幼い第一王子と長机に腰を下ろした

昨日の少女はいない

食事は採っているのだろうか

朝はパン一つで十分だとフロース王国で豪語しているジャックは自分を棚にあげて少女の心配をしている

案の定、ジャックは皿に乗せられていたフレンチトースト一切れで腹を満たしてしまった

いくら腹が減った状態でもこれなのだ

「…して、ジャックと言いましたね。あなたの出身国は“フルール公国”と聞きましたが…最近、国王妃が亡くなられたようですね。その事について…なにかありますか?」

(なんだ…この質問。実際にフルール公国の人間だったら怒っているぞ)

そう思っていても苛立ちを感じない

“感じてはいけない”のだ

「そうですね…とても悲しく思っております。とてもお優しく、国民の事を第一に考えてくださる方でした」

そう言いながら泣き真似をする

生憎、このような質問をされると思っていなかった為、ジャックは“悲劇の仮面”を持ってきていなかった


「あなた…嘘がジョーズなのね」

そんな声が 後ろから聞こえた

花の王国の嫌われ王女と訳あり執事

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