「ね、ねぇ、本当に行くの?
殺人鬼が出ると噂の、パソコン室。」
私の問いかけに”なる”という名前のショートカットで気が強い女の子(所謂ギャルってやつだ)が返事をしてくれた。
「あったりまえでしょ〜??こんなに面白い噂がある場所!行かないわけないじゃん〜!!笑」
でもぉ、と口篭る。私は小さい頃から怖い物が苦手で行かないでいいよ、と言ってくれるのを期待して聞いたのだが…
問いかけは無意味だったようで、私の期待は淡い泡のように静かに散っていく。
「すまん、遅くなった」
少し遅れて直人、というお調子者の男子が来た。
「もー!HR終わったらすぐ来るって言ったよねー!!遅れる要素なくね〜」
「るせぇ、トイレ行ってたんだよ」
「ふーん?ま、いいや早く行こうよ」
ここからが本当の悲劇の始まりで
下手すれば、最期になったかもしれない話
_______________________________________________________________。
「んじゃ、早速入るか」 といい、ドアの口に手を伸ばして触れる
キーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!
……途端、ドアが物凄く甲高い音を立てた。
「いやスライドドアってこんな音しねーだろ普通」 「いちいちうるさい、変なこと気なすんな」
どうしてこの2人はこんなにお気楽なのだろう。私はさっきから足の震えが止まらないと言うのに。
今すぐ帰りたがったが、中で1人突っ立ってる方が余程怖い。これがアニメのワンシーンであればきっと死亡フラグが立っていたことだろう。
仕方がなく足を運んでいると、中が薄暗いことに気付き、思わず声をあげる
「ひっ…!!なる!!早く電気つけて!!!」
そういうと「おっけー」と私の言葉を軽く受け取り二つ返事で返してくれた。
素早く電気の方に近付き、ボタンを力弱く押した。
呼吸の音しか聞こえなかった静かな空間にカチカチと音が響き渡る
何度も何度も、何度も。
鳴り止まない音が気になり「どうしたの?」と心配の声をかける。「……ない」
何かを言ったようだが、小さ過ぎて聞こえなかった。何が無いのだろう。もう1回聞く為に「え?」と返した。
「電気がつかない」
え??
なんで??
その言葉を聞いた途端、頭が軽くパニックになる 恐怖が私を包む。
もう怖い、何も出てないけど、怖い。
大体こういうのって雰囲気でなんでも怖くなる気がする。
「やだ!!もうやだ!!!私もう帰る!!」
私はいてもたっても居られなくて、廊下に出ようとどんどん駆け足になっていく。
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
あれ?開かな____________
これは夢だ。きっと怖い夢だ。そうだよ、そうだよね
現実逃避をしていると、そんな自分を現実に引き戻すかのように後ろから思いっきり抱きついてきた。
「だーーめ!!強制参加だよー!!!」
「ねぇドア開かないんだけど」
「え?冗談言わないでよ〜笑」
「嘘はよくねーぞ」
恐怖で震える私を知ってか知らずか私が本気で言っている事を誰も信じてくれない。きっとこの状況で怖がらせようとしていると勘違いしているのだろう。
なんて困った勘違いだ。きっとこの先これ以上嫌な事は起きないだろう。
私が冗談を言っていると勘違いをしたまま、2人もドアに手をかけている。
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
「あれ?ほんとにあかないじゃん、直人ここ開けてよ」
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
「本当に開かないんだな」
この中ではいちばん力が強い直人でもドアを開けられないのだ。
力なく倒れ込んで
私はもうここから出られないとだと、噂上で殺人鬼の居る密室空間に閉じ込められたのだと。ここで死ぬしかないのだと、絶望して目から大粒の水が出てくる。
「もう無理かも、こんなことになるなら来なきゃ良かった、ちゃんと、断ればよかった……」
流石にこんな私を心配したのか、
「大丈夫だよ、うちらがついてるでしょ!!」と明るい言葉で励ましてくれる。こういう所は本当に昔から変わってない。
さっきも言った気がするが、ずっと座って助けを待つ方が余程怖い。嫌々ながらも自分の為だと立ち上がる。
ちょっとした静かな空間の後、今まで無かった音が聞こえてくる
ぴちゃん
ぽちゃん
ザーーーー
これは
雨だ。
「てか、雨とか降ってたっけ、やばーい傘持ってきてないんだけど〜笑」
なるが雨に気付いたようだ。私の勝手なる幻聴ではなくて少し安心した。
「はぁ…今雨とか気にしてる場合じゃねーだろ」
「いーもーん、直人と違って私は彼氏いるから〜♡」
「は?しらねぇし」
「なに?負け犬の遠吠え?」
「おまえそろそろふざけんなよ」そう言ってなるを睨み付ける。
「は?なに?」と喧嘩腰に直人にいいかえす
このままでは普通の喧嘩じゃ済まないだろう。早く止めなければ。
「ねぇ、2人ともなんでこんな時にまで喧嘩なんてしてるの?」
「…」
「……」
しまった。空気を乱してしまっただろうか。
「それもそうだね、今はこんなことしてる場合じゃない」
「あぁ…、とりあえず進まねぇ?」
「うん」
奥に進む、ゆっくり、1歩ずつ。
「なんかさっきからなにかを研ぐ音しない…?」
「怖い怖い怖いよ、誰かいるの?いるなら早く出てきてよ」
「とりあえず落ち着けよ、所詮噂なんだからな」
そっか、そうだよね、噂だもん。またもやそう自分に言い聞かせていた時、後ろから全身に気持ち悪い視線を感じて嫌悪感がさす。
3人で横並びになっている部屋で気の所為だとしても後ろから視線を感じるのはどことなく怖い。
この気味悪さに思わず後ろを振り返るとそこには…
「あ”‘ぁあぁ……」
薄い緑色のお面と、鮮やかな血のついた、ナイフ
ただの噂なんて、大袈裟なんてそんな大層なものじゃなくて、
気付けば外は真っ暗で、ひぐらしの鳴き声がうるさい、耳に響いてやめて欲しいのに、その声は一向になきやまない。
いや、違う。
叫んでいるのは、私だった。
「これガチでやべぇ!!!逃げねぇと!!」
「ぅ”あ”ぁ”!」という雄叫びと共にドサッと音を立て転けた、
「こけた…?」「ひとまずたすかった…」と安堵していると不意打ちかのように
『キャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!』
と気が狂うほどの高い叫び声が聞こえ、またふりかえってしまう。殺人鬼の時と同じ事を繰り返して。
「あ、ぁ、あ、みい…?」
「な、なぁ、こいつって確か梨衣菜の友達の…」
人の声なんて聴こえないほど心臓の音が大きくなっていき、近付いて、気が付いて。
「ねぇあみい返事してよ嘘っていってよ、ねぇいつもみたいなタチが悪いドッキリなんだよね、そうでしょ」
喉が痛い。熱くて、今までにない怒りが込み上げてくる
「あ”あ”あ”ぁ”あ”あ”ぁあ」
「梨衣菜!!とにかく逃げないと!!早くたって!!」
「おら!!!早くこっちに来い!!!」
立って逃げようとした時、あみいに、足を掴まれた。死体に。遺体に。生き________________________
「あ、あ、あ、あみい?」
今のは
「危ねぇ!!!!!なにしてんだ!!」
一体
「だってあみいが、死体が」
なんだったの?
「ドア開いた!!早くでるよ!!ドアに鍵かけて!」
まだ生きてるかも
「言われなくても分かってるっつーの!!」
おいてくの?
ガチャン
「はぁ…、保健室まで来たら大丈夫だろ」
「うん…、完全に安心はできないけど、ひとまずね」
「それフラグ」
さすがに疲労が溜まってきて、休憩をとろうと椅子に座る。
すると、梨衣菜の足に血が付いているのが見えた。
きっと足を掴まれた時に付いたのだろう、早く教えなければ。
「梨衣菜、足に血着いてる。洗わなきゃ」
「え?ひっ…、ほんとだ、いつのまに…」
「足掴まれた時にじゃないの?保健室確かシャワーあるはずだからそれで流そう」
シャーーーーーー
ジャーーーーーーーー
ぽちゃん
「よし!これでもう大丈夫なはず」
「うん、ありがとう」
「外、真っ暗になっちまったな、」
「だね、今なん…もう零時!?!」
「おいおい…、流石にもう帰らねぇと…」
これはバレたら怒られるどころじゃ済まないだろう。
今更言うのも何だが、この時間に子供が外にいるなんて通報案件の何者でもない。
もう今日は帰ろう、という事で私達は無事、解散する事になった。
______________ツギノヒ。
「おはよ~!」
「あ、梨衣菜じゃん、おはよ!」
「昨日のパソコン室のヤツ!どうなったの?」
「何ともなかったよ、あんなの所詮ただの噂だって」
「うん、マジつまんなかったんだけど~」
「おれは最初から分かってたけどな…!!!」
『お分かり頂けただろうか』
さいごに(読まなくても大丈夫です)
ここまで読んで頂きありがとうございました!
小説を書くのは今作の「計算機室のカゲ」が初めてなので矛盾を感じたり意味が分からない所も多々あると思いますが楽しんで頂けたら幸いです。
最後は簡単な謎解きとして終わっています。
是非、会話の中から推理して見て下さい🕵♀️
「計算機室のカゲ」と同じ設定のものが「それゆけ!門左衛門!」さんの「使われていないパソコン室の秘密」と言うタイトルで投稿されているので、良ければ其方も見て下さいね!
それでは、またどこかで。
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