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本当に鬱陶しい。
さっきからジロジロと、一体何があるのだろうか。あるならあるで、はっきりと言えばいいものを。
「どうした?」
いつもと同じ声のトーンで話しているのに、こいつは顔を真っ赤にしてふい、とそらした。
(私から声かけてやったのに、なんだよその態度。)
窓の向こうにある広いグラウンドを見つめながら、隣の席の星空 疾風(ほしぞら はやて)はもごもごと何か言っていた。
「が………し……。き…だから…。」
「なんだよ」
なんでもない、とバレバレの嘘を付くからこちらもさすがにムカついてガッと軽く疾風の足を蹴った。
「った!!なにすんだよ!」
「仕返し」
コソリと呟いてからまたノートを取る。疾風はなにか言いたげだったが私と同じくノートを取り始めた。
私、夜海 莉聖(よるみ まひろ)は疾風と幼馴染。
家も近くて仲がいい。通学も一緒にしてるし、よくカップルと間違えられる。
実際、私には好きな人がいて疾風とは友達のような関係だった。
今は高校1年生。学級委員で生徒会にも入っている。部活はバドミントン部。学校の方針で大会などにはでないことになっている。が、私は部の中でも一番強かった。
そのおかげで大会出場を考えてくれている。
先輩たちは少しうるさいけど優しくて面白い。
ーまた視線を感じて隣を見ると疾風だった。
数秒間睨み合ってお互いにクスリと笑った。
夏の風が私たちに当たる。疾風の髪がぴょこぴょこと跳ねる。
風に吹かれてるうちに疾風のツーブロックが崩れて貞子みたいになっていた。
「疾風!あははっwおまっwww」
授業中なのに思い切り笑ってしまって二人でセットで怒られた。
ー★☆★ー
「疾風くんはどんな子が好きなのー?」
(うざ…)
自分で言うのもなんだが俺はイケメンだ。
何もしていないのに女子が甘いものに釣られた虫のように集ってくる。その上にこの質問。
(みんな俺のこと好きすぎだろ)
俺の周りに集まってくる女子の顔は好きじゃない。
心の中が見えるからだ。丸見えだ。こいつらは隠すことができないのだろうか。
「俺、好きな人いるからそういうのは…」
「誰!?」
「誰なの!?」
(めんどくさ!)
ざわざわと女子が騒ぎ出す。何組の誰だとか私だ!とかもうめちゃくちゃだ。
この中の女子じゃないのに馬鹿みたいだ。
お前らじゃなくて俺はあいつが好きなんだよ
女子の軍団に入らず、黙々と本を読んでいる。
俺の隣の席。幼馴染の莉聖。
あいつが好きなのに。
女子にしてはものすごく短い男子みたいなショートで前髪には青色のヘアピンをしている。
莉聖は男子自体に興味がないらしく、この気持ちを伝えることはとっくのとうに諦めている。
でも、そうだとしてもいるんじゃないかって気になってしまって授業中なのに口が勝手に動く。
「な、なあ莉聖」
「なに?」
「お、お前って好きな人というか気になる人とかいる?」
「まあそりゃあ高校生なんだからいるよ」
「!?」
淡々と答える莉聖。この俺の反応では周りにバレてしまう。
「そ、それって」
バクバクと心臓の音が激しくなる。
さっきまで平気だったのに不安と焦りが一気に来る。少し黙ってから莉聖は口を開いた。
「同じ部の先輩」
「そ、そうなんだ。」
今の自分はものすごく情けない顔をしているだろう。
莉聖にだけは見せたくなかった。
結局、莉聖とは…。