ドイルは燭台を持ち、夜の王宮の庭園で花を眺めて歩いていた。
あの子に毒を…終わったぞ、ハインスは終わった。だが王妃の生家を終わらせるわけにはいかないよな。ハンクが動きたいだろうが、いや動き出しているかもしれない。
後ろを守る近衛が声をかけ、待ち人の来訪を報せる。振り向くと憔悴した顔の義兄が一人でこちらに向かってくる。
「アーロン、こんな夜に呼び出して悪かったな。理由など知ってるだろうが、やってくれたな」
俺は怒っている。馬鹿な子供に面倒な物を与え、御しきれなかった阿呆の父親に。ゾルダークには、ハンクにはセシリスを引き取ってもらった恩もあるのに、こいつはそれを知らないはずがない。
「黙りか?ゾルダークの後継を殺すなど頭がおかしいのか。まさかお前の指示ではないだろうな」
それならこいつもおしまいだ。
「陛下、私の知らないところで勝手に娘達が動きました。だがゾルダークの嫁にはなんの被害もなかった。我が娘自身が毒を受けました。自業自得です。ハンクに露見しなければ何も起こりません」
もう、露見してるよ。なんの毒だかな、ハインスの娘が病気になったとは聞かないし、死んだとも聞こえてこないなら、堕胎させる毒か。
「知ってるだろうな。だから転ばせたんじゃないのか?マイラも手のひらに回った指輪を見たそうだよ」
驚くか?マイラは王女なんだぞ、暗器の知識くらいあるだろ。未来の王妃の暗殺と思われても仕方がない。
「謀反かなアーロン」
「そのようなことは!マイラ王女を狙うなど、そんな大それたことは。娘らはゾルダークに嫁入りしたいと願ったのみで、王家には何も!」
わかっているよ、だがそう見えてるんだ、それは見逃せないんだよ。
「あの場に毒を持ち込んだ時点でハインスはおしまいなんだぞ。ジュリアンに何て言う?王妃の生家が取り潰しになったぞ、とお前が言うか?廃妃になって毒を飲むしか道は残らんな」
どうにかハインスを抑え込みたいな。王妃の生家だからと調子に乗ってるから馬鹿な娘になるんだよ。
「茶会の翌日の日の出にゾルダークから騎士が複数駆けたそうだぞ」
震えているな。あの時点でハンクが調査に騎士を動かしているなら、ハインス姉妹の犯行の裏取りだと思うもんな。本当はなぜ騎士を動かしているか知らないけど。
「ゾルダークはすでに事態を把握していると?」
なんで把握されてないと思ったんだ。ハンクだぞ?あんなに大事そうに歩いてたじゃないか。ゾルダークは身籠った嫁を大事にしていると、誰からも聞いてないのか?そんな余裕なかったか。
「ゾルダークからの接触はあるぞ。毒の入手先やら使用人の証言を集めてお前に叩きつけるだろうよ。俺は助けないぞ。全てお前が悪いんだからな。毒を売った商人は囲ったんだろうな?」
青ざめてるな。捕まえることができなかったか、他国の者か。本気で終わるな。
「ゾルダークの怒りを和らげたいなら決めろ。娘達を今後どうする?修道院か?そんな生温い罰などではハンクの怒りは収まらんぞ」
「ジャニスは毒を受けた!罰はもう受けました」
まだ娘が可愛いか、切り捨てなければ助からんだろうに。
「ならばゾルダークが動くのを待つか?娘が殺されても何も言えんな。先に仕掛けたのはハインスだ。俺はハインスに罪を問うからな。王宮に毒を持ち込んだ罪、ジュリアンに話して廃妃にする。王太子の疚しい部分は消しておきたいからな」
王族は今後一切ハインスに近寄らずだ。
「アーロン、娘が毒を受けたからなんだ、それを言ったら溜飲が下がるとでも思ってるのか?もっと事態は深刻だぞ。娘は二人共平民に嫁がせろ、農家がいい、今すぐにだ。場所は甘えられない辺境がいいぞ。フォード辺境伯領とノーランド辺境伯領に分けろよ。二人仲良く共には駄目だ」
ここまで落とせばハンクも納得するだろ。公爵令嬢から農民の嫁だぞ。修道院なんて甘いもんな。
「息子に当主を渡せ、そうしたら廃妃は無しにする。ジュリアンにも責められないぞ」
「陛下、その通りに動けばハインス家は取り潰さないと?」
俺はな。王宮に毒を持ち込んだことには口を噤む。マイラしか疑ってる者はいないしな。これでハインスも大人しくなるだろ。
「せめて、男爵辺りに嫁がせてもいいのでは?」
甘いなぁ。それならハンクの手も届くじゃないか。娘達がどうなってもいいか。
「お前が決めろ。よく考えろよ、今頃その商人はどこにいるんだろうな。すでにゾルダークが囲っているかもしれんな。ハンクが怒ったら俺は助けないぞ、お前が悪いんだからな」
俺はこの件では融通を利かせたからハンクには怒られない。ハインスが弱体してくれたら御の字だ。息子は二十二だもんな、いきなり当主になったら戸惑うよな。だが表舞台からアーロンが消えればジェイドの代でもハインスを気にすることはないだろ。ゾルダークはカイランだしな。マルタンのテレンスが厄介なくらいで。
「アーロン、ゾルダークには全て知られていると思っていい。見張らせている者の話だと、今日の日暮れ前に騎士達が駆け戻ってやけに静かだそうだ」
これだけ言っても理解できないなら、本気で廃妃にして、俺は悲しみから譲位、離れた離宮で…いいかもしれない。
「怒るな。中に欲しがっていただろ?」
孔に出した子種を掻き出さないと腹を下すと説明したら、掛け布を頭から被り出てこなくなった。薄い茶も空色も見えない。
「お前は俺にしがみついていればいい、俺がやる」
掛け布ごと上から覆い被さり小さな体を撫でる。
「俺も中に出したかった。お前は孔まで心地いい」
掛け布から顔を出し空色の瞳が俺を睨む。
「恥ずかしいのに」
そうだろうな、だが我慢できなかったんだ。額に口を落とし、横に寝転び腕の中に掛け布ごと囲う。
「耐えろ、全て美しいと言ったろ。また中に出したいんだ、慣れてくれ」
瞳を見つめて懇願する。お前の全てを俺のものにした心地がする、子が生まれたら秘所にも孔にも出して流れ出る様を眺める。
ゾルダークの歴代当主にはこれがいなかったから子が少ないんだ。俺は何度もこれの中に注ぐ。これはいつか女児を産むかもしれんな。年寄は信じないだろうがな。
「孔に注ぐのは嫌だったか?」
「ハンクの子種を感じたわ、熱くて幸せだったの。出さないと駄目?入れておきたいのに」
孔が柔らかいうちに掻き出したほうがいい。
「また注ぐ。ほら出てこい」
浴室から湯の入った盥を持ち、机に置く。
脇に手を差し込み体を起こし、寝台に膝で立たせ片手で抱きしめ尻に触れると子種でぬるついている。指を二本差し入れ、子種を掻き出す。中で指を広げるとシーツに子種が垂れてくる。これはまた滾り出すな。布を濡らし尻と孔を拭いていく。新しい布で小さな体を拭き、ソファに座らせてから下着を履かせ夜着を着せる。自身は浴室へ移り温くなった盥の湯で体を流す。体を拭き夜着を着込んで寝台のシーツを新しいものに替える。掛け布も新しいものが積んである。それを空色に渡し抱き上げ寝台に横たえる。後ろから抱き込み掛け布を二人にかける。振り向いた赤い口に舌を入れ唾液を送る。
「もう遅い、眠れ」
俺の目蓋が重くなる。腕の中にこれがいるとやはり落ち着く。
頭に静かな寝息があたる。珍しくハンクが先に眠りに就いた。それだけ疲れているのよ。足があんなになるまで歩くなんて、どれだけ無理をしたのか想像もつかないわ。同行した人達は皆同じようになったと言っていた。無事に戻って来たけど、もう離れられないわね。次は時がかかろうとも共に動かなくては、また無理をするわ。カイランのことは嫌な思いをさせるかと心配したけど、笑っていたし、機嫌はよかった。
まだお尻に何か入ってる気がする、本当に入るなんて…閨ではお尻も使うのね。知らなかったわ。掻き出すだなんてもったいない、またするのかしら…
太い腕はいつものように私を捕まえている。ハンクがいるなら私は幸せだわ。