ばりばりアメ日のつもりで描きましたが、英日と捉えられる描写があるかもしれません。
地雷の方はご注意を…
純白のレースカーテンが暖かな春の陽気によって、シルクのように光沢を見せる。
窓際に置かれたマリナカッシーリに座り、コーヒーテーブルにいつもの用意をする。
休日のこの時が、唯一私に安らぎを与えてくれる。
温めたポットにダージリン・ティーの茶葉を入れ、事前に沸かしておいた熱湯を少し高めの位置から注ぐ。
そして、ポットに蓋をし5分ほど蒸らす。
こうすることで、紅茶の旨みや香りを引き出すことができるのだ。
じっくりと時間をかけて蒸らしているこの待ち時間も、私の楽しみの一つである。
普段は長く感じる傍観の時間が、瞬刻のように過ぎていった。
紅茶をカップに注ぎ、濃いオレンジ色の水色(すいしょく)を見つめる。
その透明感の強い輝きを持つ色合いは、まるで紅茶のボルドーだ。
官能を刺激する香気を堪能し、ようやく口へと運んだ。
時間をかけて楽しむのが、紅茶というものだ。
香り高く、爽やかな渋みをもつマスカットフレーバーが口の中で広がる。
「紅茶のシャンパン」と呼ばれるのも頷ける爽やかな口当たりにいつも魅了されてしまう。
まさに甘美なひとときだ。
後味の余韻を楽しみ、再びカップを持ち上げ口元へ運ぼうとしたとき
妙な悪寒が私を襲った。
その違和感を体系的に理由づける間もなく、私の勘は当たることになる。
「おやじー!!!聞いてくれよー!!!」
大声と共に爆音が響く。
どうやら、私のティータイムはこの無神経の塊によって終わりを告げられたようだ。
「アメリカ、いつも言っていますよね。ドアを壊さないでください。」
勢いよく開けられたドアは、見るにも耐えない無惨な状態となっていた。
すまんすまん、と聞き飽きた私の言葉に全く反省の色が見えない謝罪を返してくる。
「あ、お邪魔するぜ」
今更何の意味も持たない言葉を、思い出したかのように呟かれた。
「親父ー!今暇か?」
「見て分かりませんか?私は今優雅にティータイム中ですが?」
「ほーん。じゃあ俺も参加してやる!!」
何故か上から目線なアメリカ。
結構です。と全身全霊で拒否をしたつもりだったが
「遠慮すんなって!!」
と言い、私の向かいに置かれた椅子に腰をかけた。
「本当に何の用ですか。」
「お、気になるか?」
待ってましたと言わんばかりの顔に苛つきを覚える。
「全然気になりません。お帰りください。」
「しょうがないなー!そこまで言うなら!!」
此奴には話が通じないようだ。
「俺って日本と付き合ってんじゃん?」
そう、今アメリカは日本とお付き合いをしている。
告白したのはアメリカ。つまりは、日本はアメリカと同じ気持ちだったと言う訳だ。
こんな奴の何処がいいのか、と言う本人には聞けない疑問が永遠と留まり続けている。
「で、それがどうかしましたか?」
「惚気話をしにきたなら帰ってください。」
「ちげぇよ!!!俺は相談をしに来たの!!」
「相談?」
聞き慣れない言葉に目を疑う。
アメリカに悩みを感じる脳があったのか。
「なんかすげぇ失礼なこと考えてないか?」
「いえ、別に。」
「そ、そうか? 」
「それで、相談とは?」
「…実はな…」
「最近、日本が冷たいんだ…!!」
「冷たい?あの日本さんがですか?」
「それは興味深い話ですね。」
「何で嬉しそうなんだよ。俺は本気で悩んでんだぞ!!!」
「はぁ…どうせ貴方が気に触ることでもしたんでしょう?」
実際、現在進行形で私にしてますし。
「マジで心当たりがねぇんだよ…。」
眉間に手を置き苦笑いする姿に、冗談ではないと確信する。
「…冷たい、って具体的にはどのような感じなんですか?」
「付き合う前は、抱きついただけで顔が真っ赤になってたんだぜ?」
「いやーあの顔は最高にcuteで…」
「色々ツッコミところはありますが、惚気話をするだけなら本当に帰ってください。」
付き合っていないのに抱きつく無神経さがその結果を招いているのでは、と今更ながら思う。
「聞いてくれよッ!!最近の日本は俺が何しても無反応なんだよ!!!」
「この前だって…」
「Japaaaan!!!」
大きな声を出し、パソコンを打ち込む日本に抱きつく。
体格差で日本がアメリカの腕に埋まっていた。
「…!アメリカさん、こんにちは。」
「今日はどうされました?」
いきなり後ろから抱きつかれた日本は、少し驚きの表情を見せたが、直ぐに冷静な落ち着きを取り戻していた。
「…昼飯、食いに行こーぜ…!!」
「分かりました。少し待って下さいね。」
「この仕事、キリのいいところまでやりたくて…。」
抱きつかれていると言うのに彼らしくない平静さを見せられ、想いがくすぶる。
「あーその前にちょっと頼みがあるんだが…」
「?何ですか?」
「キス…してもいいか…?」
「…!?」
予想だにしない要望には、流石の日本も驚きを隠せないようだった。
「なんて…」
その姿を見てことの重大さに気づき、自分の浅はかな考えを取り消そうとしたが
「良いですよ。どうぞ。」
日本は小さく微笑んだ後、ゆっくりと目を閉じた。
全く予期していなかった行動に、こちらが取り乱してしまう。
「い、いや冗談だぜ!!いきなり変なこと言って悪かったな!」
「昼飯行くか!!」
「あ、はい。分かりました。」
「ってことがあったんだ…」
「なるほど。確かにそれは、日本さんらしくないですね。」
「彼の文化的背景から見ても、スキンシップはあまり浸透していませんからね。」
「普通なら動揺するはずです。好きな人からならば、尚更。」
「親父ー!!!日本に理由、聞いてくれよー!!」
「何でですか…。自分で聞いてくれば良いのでは?」
面倒なことを頼まないでいただきたい。それに、人の恋愛事情に首を突っ込む気は更々ない。
私が干渉したことで弊害を起こしたくないのだ。
「日本さんがそのような態度になったのは、間違いなくアメリカのせいでしょう?」
「自分で何とかして下さい。」
我ながら息子にかける言葉ではないことは分かっているが、これから彼と共に生きていこうとしているならば自分で解決する力も必要である。
「だって…俺から聞いたら、重い男みたいになるじゃねぇか…。」
覇気のないくぐもった声で言うアメリカ。
「実際重い男でしょう?」
「まぁ…そうだが…。日本の負担になりたくねぇんだよ…。」
「やっぱり日本、、俺に冷めたのか…?」
微かに震えた声。
彼のネオンブルーの瞳がどんどん不安で満ちていく。
いつも自信満々な彼が、恋愛となるとこうも辛気臭くなるとは。
「…うじうじしないでください。貴方らしくない。」
「…分かりましたよ…。理由を聞けば良いんですね?」
「!!」
「良いのかっ!!?」
再び輝きを取り戻した瞳が私を見つめる。
「ただし、私が手を貸すのはそれだけです。」
「後は自分でどうにかしてください。」
「分かった!!ありがとな!!」
アメリカは、先程の雰囲気が嘘のように活き活きとした顔つきで、ズカズカと部屋を後にした。
「…はぁ…どうしたものか…。」
「本当に手のかかる息子だ…。」
冷めた紅茶を見つめ、そう呟いた。
「遅れてしまってすみません…。仕事が少し長引いてしまって…。」
申し訳なさそうに眉を下げる日本。
博愛と活力を帯びる紅色の瞳の下には、黒い隈が滲んでいた。
「いえ、大丈夫ですよ。気にしないでください。」
静寂を纏う夜の小さな会議室。
今は使われていないこの部屋は、滅多に人が訪れない。
彼をここに呼んだのは、昨日アメリカから頼まれた依頼を遂行するためだ。
それ故、仕事が終わり次第この部屋へ来て欲しいと事前に申し出ていた。
「それで、どうかしましたか?」
首を傾け不思議そうな顔をする日本に、言葉を選びながら質問を投げかける。
「…最近、日本さんがアメリカに冷たいと、風の便りに知りまして。」
「その理由をお聞きしたいのですが。」
「冷たい…ですか?」
「えぇ。アメリカにキスをせがまれても冷静だったとお聞きしています。」
「え、、あ、それは…」
何かいいたげな表情を見せているものの、口をつむぐ日本。
彼の中で理由となる事情があるのは明白だった。
「…」
「…日本さんは…」
「アメリカのこと、好きですか?」
「も、もちろんです!!」
「あっ…」
私の不意をつく質問に反射的に答えてしまったようで、日本は頬を赤く染めた。
「ふふっ、そこまで即答されては疑えませんね。」
顎に手を当て、小さく微笑む。
「うぅ…揶揄わないでください…。」
ただ1人の人物に向けられた特別な感情が、彼の瞳を潤ませる。
「…ですが、それならば尚更疑問です。」
「何故、彼のことを考えるだけで、そんな表情になってしまう貴方があのような態度を?」
「…その…あ、アメリカさんには内緒にしてくださいね…!!」
「勿論です。私の口からバラす、なんて事はしませんよ。」
その言葉を聞き、安心した様子の日本は淡く紅に色づく顔を俯かせ、勇気を出すかのようにゆっくりと口を開いた。
「…えと…実は…」
「かっ、かっこよく見られたくて…」
「…はい???」
微塵も予測できなかった答えに、脳の整理が追いつかない。
「えっと…それはどういう…」
「その…アメリカさんは私によく可愛いって言ってくださるんです。」
「その言葉自体は嬉しいのですが…」
「た、たまにはかっこいいと言われたいなと…。」
何ですかその可愛い理由は、とツッコミたい気持ちを抑え、別の疑問を投げかける。
「理由は分かりましたが、それが態度の違いとどのように関係するのですか?」
「えと…私ってアメリカさんの行動全てに戸惑ってしまって、、 その度に可愛いと言われてしまうんです…。」
「なので、逆をついて冷静になろうかなと…。」
なるほど。だから過度なスキンシップをされても落ち着いていた訳だ。
いや、実際には無理に落ち着こうとしていたようだが。
かっこいいと思われたい、だなんて考えている時点で望みは叶わない気がする…と言うのは言わないでおこう。
「…それに…」
「アメリカさんって女性慣れしてそうと言いますか…。」
「だから、私みたいにすぐに照れてしまうのは鬱陶しいかなと…。」
女性慣れ、、ですか。
「だ、そうですよ。アメリカ。」
「えッ??それってどう言う…」
『バンッ』
戸惑いの声が掻き消されるほどの轟音が鳴り響く。
見慣れたドアの状況に、もはやため息すら出ない。
「Japaaaaan!!!!!」
間髪入れずに日本に抱きつくアメリカ。
私の位置からだと、すっぽりと日本が腕の中に包まり姿が見えなくなる。
「あ、アメリカさんッ!!??」
「なぜここに…!!?」
誰かさんに呼ばれたからな、とこちらを見ながらスマホを軽く振るアメリカ。
「誰かさん?」
さて、誰でしょうね。
「も、もしかして今までの話…全部聞いてッ…」
「まぁな!!!」
「そんな自信満々に言わないでくださいッ!!」
「へへっ」
嬉しそうにさっきよりも強い力でぎゅっと日本を抱きしめる。
「んぐ…」
「…今も冷静でいんの?」
「…今は…無理そうです…」
表情を隠すかのようにアメリカの胸に顔を埋める日本。
「顔、見ても良いか?」
「…どうぞ…」
日本の背中に回していた腕を緩め見つめ合う。
「顔真っ赤だな。」
透き通るような白い肌に日の丸の紅が広がってゆく。
恥ずかしさのあまり潤む瞳は、太陽のように輝き微塵の濁りも見せない綺麗なものだった。
「誰のせいでしょうね。心臓ばくばくですよ。」
「奇遇だな。俺もだ。」
少しの間沈黙が続き、目から唇へと視線を移す。
「…日本…キスしても良いか…?」
「…い、イギリスさんがいるので…」
「イギリスならもう帰ったぞ。」
「え、いつの間に…」
「俺たちの空気を察してくれたんじゃないか?」
日本の頬に手を置き、悪戯に笑う。
「で、どうなんだ?」
「…今は…心臓の音がうるさくて、格好つけれません…。」
「じゃあ、おあずけだな。」
「…いじわる」
「それはyesってことでいいか?」
目を逸らしコクリと小さく頷く彼に愛おしさが溢れる。
頬に添えた手の親指でそっと頬筋を撫で、緊張した顔を緩ませる。
少し不恰好に目を閉じこちらを向く日本に、互いの唇が触れ、 やわらかい唇から温かい感触がじんわりと広がってゆく。
日本の漏れた甘い吐息が俺に熱を帯びさせる。
自身から湧き上がる愛欲をぐっと堪え、静かに唇を離した。
溶けそうに滲む瞳に淡く紅潮する頬。
鬱陶しいほど鳴り響く心臓の音。
我を忘れないように日本の華奢な体を抱きしめるので精一杯だった。
「…ちゃんと飯食ってるのか?」
「それドイツさんにも言われました。」
「…今わざと他の男の名前出しただろ。」
「えへへ、バレました?」
小悪魔のように笑う姿にすら愛おしさを感じてしまう自分に、どれだけ彼のことが好きなのかを実感する。
「…俺の好きな人、 日本が最初で最後だからな。」
「へッ!!?」
今にも溶け出しそうなほど熱く火照る日本の頬にかけた手を、彼の頭の後ろに添え、今度は強引に口付けをする。
プロポーズとも読み取れる俺の告白に返事をするかのように、日本は静かに目を閉じ、俺の首に手を回した。
はい…ノベル難しいです…。
意外と恋愛経験がなくて恋の駆け引きができないアメリカさんもいいと思うんですよね。
軽そうに見えて、日本のことを世界一愛してくれそう。あと、ちゃんと愛が重い。
日本は一応男なので、かっこいいと思われたい願望がありそう。
でも、何しても可愛くなるんだろうな…。
イギリスが持つ日本に対しての感情は、読み手に任せます。叶わない恋心でも友情でも。
一応どちらとも取れる書き方をした…はず…。
小説久しぶりすぎて不恰好かもしれませんが、ここまで読んでいただきありがとうございます!!
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コメント
4件
わぁ!!新シリーズだ嬉しい🥰日本もアメリカも初々しいバカップルって感じで可愛くて和みました。アメリカさん、日本の事になると弱気になっちゃうのほんとに可愛い。そして、そんなアメリカの背を何だかんだ言いながら押してあげるイギリス優しくて好き☺️アメリカのことも日本のことも大好きだから、困ってたら手を貸したくなっちゃうって理由だったら自分が嬉しいです。日本くん、アメリカさんにかっこいいって言ってもらえる日が来るのかなぁ?あの人何しても可愛いって言いそうだからな…頑張ってとしか言えないですね。 次のお話も楽しみにしています!
最高すぎます!センス良すぎです!