テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
1ヶ月以上ぶりの先輩と過ごす週末。
僕は今までどんな感じで先輩と接していたっけ?
久しぶりすぎて何だか緊張する……
そわそわしている僕とは打って変わって、通常運転の長谷先輩。
いつものように仕事終わりに2人でご飯を食べて、その後は――
「じゃあね祐希。気をつけて帰るんだよ」
食事を終え、レストランを出ると先輩は、僕に向かってひらひらと手を振って帰っていった。
あれ?帰るんだ……
今日は先輩の家に行かなくていいのか……
何だか少し物足りない。
――じゃなくって!何もないのはいい事!
翌日土曜日、先輩と2人で映画を観て、ランチしてショッピング。
「何か欲しいものある?」
買ってあげるよ。と先輩は甘い笑顔で僕に言った。
「えっと……無いから、大丈夫……」
「遠慮しなくていいのに」
先輩は少し困ったように、ふふっと笑った。
こういう時は断らずに買ってもらった方がいいのかな?その方が先輩は嬉しいのかな?
分からないな……
僕と先輩はしばらくお店を何軒かブラブラした後、カフェでお茶をして夕方には解散。
あれ?今日もこれで終わりなんだ……
何だか今日はデートみたいだったな。
――ん?デート?あれ?これってデートなの!?
◆
「どうやら僕は今日、デートをしていたみたいです……」
「みたいというかデートだよ。藤原君」
先輩と別れた後、僕は【Holiday】に出向いた。
「先輩は僕に飽きちゃったんでしょうか?」
「何でそうなるの!?ようやくまともなデートに辿り着いたのに」
「だってあの先輩がエッチな事一切しないんですよ?きっと新しい遊び相手が見つかったんだ」
「藤原君ネガティブ〜」
谷口さんはグラスに長谷先輩がボトルキープしたラム酒を注いでくれた。
「長谷は今、必死で欲望を抑えてるんだよ」
「エロい事をして来ない先輩は先輩じゃない」
「誠意を行動で示してるんだよ。身体だけじゃない、遊びじゃないって」
ま、いつまで我慢できるか分からないけど。
あいつ万年発情期だから。
と、谷口さんはケラケラ笑った。
先輩は遊びで僕の相手をしてるんじゃない。
【Holiday】に行く度、谷口さんは僕を諭す。
……信じても、いいのかな?先輩の事。
◆
仕事に追われる1週間を終え、また週末がやって来た。
金曜日の仕事終わりは先輩とご飯。いつものルーティン。
お店を出ると「じゃあまた明日ね」と先輩は僕に背を向けて帰ろうとした。
「あ……あのっ!先輩!」
僕は離れていく先輩を追いかけて、彼の仕立ての良いスーツの袖を掴んだ。
「祐希、どうかした?」
「えっと……あの……」
引き止めたはいいが、恥ずかしくて言葉が出てこない。
もう少し一緒にいたいです。先輩の家に行ってもいいですか?
……言えない。
エッチな事ばかりする先輩を嫌だ嫌だと突っぱねておいて、今更家に行きたいなんて。
これじゃ僕がただやりたいだけの奴になってしまう。
先輩の事が好きだから、もう少し一緒にいたいです。
言わなきゃ。好きだって言わなきゃ。
「祐希?」
「あー……うーっ」
先輩は、顔を真っ赤にして呻く僕を不思議そうな目で見ている。
がんばれ、僕。
「……先輩」
「うん?」
「先輩……好き」
先輩のスーツの袖を掴む手に力がこもる。
消え入りそうなか細い声で、僕は先輩に告げた。
街は賑やかなはずなのに、僕と先輩の周りだけ静寂に包まれていた。
一世一代の告白。まさか、僕の声が小さすぎて先輩に届いていないんだろうか?
先輩はうんともすんとも言ってくれない。
もう1回言った方がいいのかな?恥ずかしいのに……
おろおろしていると、袖を掴んでいた僕の手を先輩が握った。
「せんぱ……」
先輩は無言で僕の手を引き、歩き始めた。
向かう先は――