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バイオテクノロジーの分野で、

不破ふわ理人りひとは、間違いなく天才だ。


しかし彼は、間違いだらけの恋をしている。


そんな不破准教授は、つい最近「好き」とはいえない、

強力な「呪い」にかかったそうだ。




◇ ◇ ◇



高校時代の親友に呼び出された居酒屋。

「イズミと会うのって、4年ぶりかな」

「たぶん、それくらい」

「久しぶりだよね。それじゃあ、再会を祝して~乾杯! でさ、うちの大学で臨時秘書しない?」

「リオナ、乾杯ぐらいは、ふつうにさせて欲しいんだけど」

「……ごめん」

せっかちな仕事の斡旋を受けた成瀬ナルセイズミは、レモンサワーで喉を潤したあと、対面に座る五十嵐イガラシ莉緒那リオナに、4年ぶりに会ったとは思えない冷めた視線を向けた。

艶のある巻髪に上品なスーツを着こなす帰国子女の親友は、現在、東帝大学の職員として勤務している。

かたやイズミは、休職して半年の身。

「なんで、わたし? 普通に募集かければいいじゃない」

「急を要するのよ。いまから募集をかけても、書類選考して面接となると、最低でも1か月はかかるでしょ。それに今回は英語力と秘書経験が必須だから、条件を満たす人材を確保するのは、そこそこ難しいのよね」

そういうことか。で、あればなおさらのこと、

「リオナが、やればいいじゃない」

グラス片手にそう言えば、「それができれば頼んでいないから」とリオナは片眉をグイッとあげて、ついでにグイッとライチサワーを飲み干した。

すぐに次のドリンクをオーダーして待つ間、できない理由を列挙していく。

「わたしはすでに人事担当として総務課で働きながら、学長と学部長の秘書を兼務しているのよ。社畜ならぬ学畜、一歩手前。これ以上は無理だから……で、日給はこれでどう? これプラス、交通費やら諸手当あり」

無理な理由からそのままの流れで、待遇面の話をしてきた。

示された3本の指を見て、悪くないと思ったイズミは「へえ~」とグラスを傾けながら、ついつい話を聞いてしまった。

これが、大きな誤りだった。

そもそも、前職に見切りをつけ、日本に帰国してから用意されていた転職先に、さっさと就職しなかったのも間違い。

1か月前に帰国するやいなや「会いたい」と執拗に誘ってきたリオナに会ったのも間違い。

もっと怪しむべきだったのだ。



高校を卒業後。アメリカの大学に進学したイズミは、卒業を1年後に控えたある日。

「卒業生が社長をしている会社のパーティーに行こうよ」

大学の友人に誘われ、オンラインゲームの開発を手掛けるベンチャー企業『サルスアニミ』のパーティーに参加した。

Salus animiサルス アニミ ~ ラテン語で『心の健康』を意味する社名を持つ会社の代表と顧問弁護士は、

「イズミ、キミもゲームが好きだろ? そうだよな。だって日本人なんだから。最高だよな、日本のクリエイターは!」

ゲーム大国・日本からやってきたイズミのことを、先入観から無類のゲーム好きと勝手に思い込んだ。

「わたし、アニメは観ますけど、ゲームは詳しくないですよ」

その場で否定したイズミだったが、

「出た! 謙遜けんそん民族! いいって、いいって。それって、日本基準の『詳しくない』だろ。オッケー、採用」

そのまま広報担当として採用され、帰国することなく就職。

『サルスアニミ』は、日本大好きな天才エンジニアにして、ゲーマーにして、アニメオタクな社長エドワード・リー・ダヴェンポートが学生時代に起業したゲーム開発会社で、彼が率いるゲームエンジニア集団が発表するオンラインゲームは、世界的なヒット連発、ここ数年で急成長を遂げていた。

そのため給料はすこぶる良かったが、依頼される仕事量に対してあきらかな人員不足。仕事はいつも山積みで、労働環境はとてつもなく悪かった。

広報担当のイズミはまだマシだったが、社内の過半数をしめるエンジニアたちは、人間であることを半分以上放棄した不眠不休集団で、なかでも最高責任者であり会社の代表であるエドワードは、その筆頭。

ほぼ週1のペースで倒れていた。社長にして社畜オブ社畜。

なにが『Salus animiサルス アニミ~心の健康だ』と笑うしかない過重労働の日々を過ごしていた。

このままでは本当にマズイ、とイズミが思っていたとき、

「アイツ、死ぬかも」

同じく警鐘を鳴らしたのは、無理やり受けさせた健康診断の結果の悪さに顔を青くしてオフィスに飛び込んできた顧問弁護士でエドワードの親友ジョシュア・ターナーだった。

「頼む、イズミ。このままじゃ、エドが死ぬ。キミがエドの生活を徹底管理してくれ。日本人は時間管理が得意だろ」

またしても先入観からだったけれど、イズミはこれを承諾。

「そのかわり、わたしのやり方に口を出さないでくださいね。あとからクビにしたら訴えますよ」

「わかった! イズミに全権をまかせる! 誓約書も用意する!」

とういうことで、不健康社長エドの生活改善に乗り出すことになった。

広報業務のかたわら、不健康男の食事管理にはじまり、自宅と会社の強制送迎など。

いわゆるスケジュール管理といった秘書業務を兼務するようになった。


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