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1943年7月17日 金曜日
今日はあのリストを見た。
あの紙の山の中に私の名前があった。見た時に手が震えた。まるで自分の影を見てる気分だった。
私はここにいたのに、パパの子なのに私は消される予定だった。
多分パパは知らない、知らと思ってる。
でも私は見た、名前の横にある番号も出発の日も。
私は「犠牲にならない」、私は「誰かのためにも沈黙しない。」
ママは多分知ってる。朝から私の顔を見てる。でも私はもう決めた、この家を出るって。
パパはパパだった。あの人は少なくとも私を愛してる。歪んだ形だろうと愛してる。パパが抱きしめた時の温もり、あの腕を思えてる。
だから手紙を書く。
これが私のさようなら。
エスターから父への手紙。
パパへ
パパはあの時、私が家を出たことを「わがまま」って思うかもしれません。
でも知っちゃったの、あなたの机の上の書類に私の名前があった。
それを見た時寒気がした、あの赤い腕章より、おっきな声で怒られた時よりも悲しくて、痛かった。
どうして私の名前があるの?
小さい頃から守ると言ってくれたのに、
私は憎みたい。でも出来ない。
あなたが毎晩、私の部屋の前で立ち止まっていた事を私は知ってる。
私が寝てるふりをしていた時、私の髪を優しく撫でてくれた事も。
私は逃げる。でもパパは憎まない。
最後まで、戦争が終わるまで逃げ続ける。
あなたが私をどう思っても、最後まであなたの娘だった。
どうかママを守って。
また会う日まで。
エスター より。