テラーノベル
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「敦、お前に担当してもらいたいしごとがあるんだが」
「依頼ですか?」
いつものように敦が報告書をまとめていると国木田が話しかけてきた。
「ああ、巷で話題の”天使様”の調査だ。」
そう、最近世間を騒がせている自殺志願者のもとへ現れ、殺してくれる殺人鬼の噂だ。
その者に殺されたものはとても穏やかな表情で逝くこと、また殺人現場に羽根が落ちていたことから天使様と呼ばれ、一部の層から絶大な支持を受けている。
しかし同時に、一般の人からは自殺願望者へと、誘う恐ろしい殺人鬼とも恐れられている。
「未だに身元すら明らかになっていないことから、異能力者の可能性もある。気をつけてかかれよ。」
「はっ、はい」
名も知らぬ”天使様”、何者なのだろうか
――
「天使様、だろ?ある意味救いなのかもしれないわね」
聞き込み調査のとき呟かれた言葉だ。
たしかに救いなのかもしれない。それでも敦は
「生きたまま、救う方法はないのかな」
吐いた言葉はなんの意味もなく泡沫へと変わる。
「あれ?ハンカチどこいったかな……」
気がつくとポケットの中のハンカチが消えていた。
辺りを見合わしてると見知らぬ少女に声をかけられた。
14歳ぐらいだろうか。敦の後輩にして同居人の鏡花の同じ歳くらいに見える。
少しよれたワンピースが印象的だ。
「お兄さんの?これ」
少女の手のひらにあったのは間違いなく敦のハンカチであった。
「あ、ありがとう」
感謝の言葉を述べるともうその場には少女はいなかった。
少女のいた場所にはハンカチがひらひら舞っていた。
「おかしいなあ……」
――
結局、なんの情報も得られなかった。
そんな敦にこえをかけてきたのは…。
「あーつし、次の被害者について知りたーい?」
探偵社の要とも言える青年、乱歩その人であった
「うわっ!?」
急な声掛けに思わずのけぞる敦だったが意を決して乱歩に聞いてみることにした。
「乱歩さんはもう分かってるんですか?」
乱歩はいつもと同じ飄々とした笑顔で敦にそっと囁いた
敦はとある廃校舎へと向かった。
そこに「天使様」がいると言う話だからだ。
ある人は語る。まるで救いの天使のようだと
ある人は語る まるで堕天させる悪魔のようだと
しかし、敦は…
そこに立っていたのは先日あったハンカチを拾ってくれた少女であった。
以前着ていたワンピースとは違いブカブカのパーカーを着用していた。
先日と変わらないあどけない顔立ち。
しかし、どこか憂いと悲しみを帯びた表情をしており、それを経て消えてしまいそうな儚げな少女に昇華されていた。
「お兄さん、気づいていたの?」
「いや全然」
しかし不思議と納得はできる
「ほんとはね、悪いことだって理解できてたの」
「でも、生は時に人を苦しめるから」
「だから、私が救わないといけないの」
そう、かなしげに微笑んだ少女の頬には1雫の雫が零れていた。
「確かにそうだ でも、周りの人は苦しんでいる人の生きる道を見つけてあげないといけない 一緒に諦めたら終わりだから!」
そう敦が声をあげると少女は目を広げ、苦悶の表情を浮かべた。
「君は綺麗すぎるよ!!!」
「それじゃ!救えないの!」
「救えちゃうと…」
そう言うと少女はまるでドミノ倒しにあったドミノのように崩れた。
そして、ぽつりぽつりと話し出す。
彼女には優しい姉がいたこと、けれども優しすぎて苦しんだこと、彼女を救うため奮闘したこと、それが彼女の重みになっていたこと
「ごめんなさいっ」
「人の気持ちを勝手に決めてはだめだ きっと、救いになっていたと思うよ」
そう言うと敦はハンカチを取り出した。
彼女が拾ってくれたハンカチによく似ている。
少女はハンカチを借り、瞳を抑えだす
「ありがと…」
その後、少女の事情や強すぎる異能、いろいろな要因が絡み、その身柄は異能特務科預かりとなった。
やがて「天使様」も忘れ去られるだろう。
実際天使様などいなかったのだから当たり前である。
いたのは過去に囚われていた少女と、優しい白虎だけなのだから。
終わり
以下補足&ショート過ぎるSS
アメ玉を咥えながら、青年は物思いに耽っていた。
思い出すのは先日の事件である。
別名「天使様」事件。
敦に手を貸したのはほんの気まぐれだ。
かつて探偵社に救われたとある少女も下手したら「天使様」になっていただろうから。
それに「天使様」にはあまりいい思い出はない。
一刻も早くこんな下らない噂を終わらせたかっただけだ。
補足(天使様こと白いワンピースの少女について)
鮮やかな白髪の長いロングの少女
異能力は大して決めていなかったがヒロアカの剛翼みたいなイメージです。
必要に応じて羽は出し入れできる
ワンピースはお姉さんから貰ったものでかなりのお気に入りではあるけど流石に殺人時は使っていない
汚れてもいいようにパーカーなど動きやすいものを着用している
華奢で細い体型を誤魔化し神聖さを出すためブカブカなものを着る。
廃校舎にいた理由についてはお姉さんの母校でお姉さんが虐められていた忌まわしい場所だから壊そうと来ていた。
コメント
1件
ありがとうございます… 天使様かわいい…