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そこには、真っ白な衣装に身を包む、美しい女性の姿が描かれていた。
そしてその下には、「永遠の眠り姫」と書かれていた。……さぁ、始めようじゃないか! これから始まるのは、たった1人の女の子のためだけの物語なんだ。
舞台の上に上がった途端、それまで騒いでいた観客たちも水を打ったように静かになった。
静寂の中で、僕はただ一点だけを見つめ続ける。
そこには、今まで僕が演じ続けてきた「王子様」がいた。
僕と同じように、彼女もまたこちらを見つめ返してくる。
まるで鏡合わせのように向かい合う僕らの間には、言葉など必要なかった。
彼女が、僕の目を見て微笑んでくれるだけで、それで十分だ。
その瞬間、僕の視界は真っ白に染まった。あまりの眩しさに思わず目を閉じてしまうほどだったが、不思議と痛みはなかった。僕はゆっくりと目を開きながら「今のは何だったんだろうか?」と考えることにしたのだが――。
目の前に広がる光景を見て絶句してしまうことになる。そこに広がっていたのは一面の花畑なのだが、その花々は全て見たこともないものだったのだ。それに、さっきまでは間違いなく室内にいたはずだし、窓の外にも青空が広がっていたはずだったのに今は夕焼け空になっているではないか。いったい何が起きたというのだろうか? 混乱する僕だったが、とりあえず周囲の状況を確認しようと立ち上がることにする。その際に気付いたことがある。先ほどまでの服装とは違っていることだ。僕は普段着ているはずの学生服ではなく、白いシャツの上に青いジャケットを着ており、下もジーンズ生地の動きやすい格好をしていたのだ。
そこでふと思い出すことがあった。
それは今朝起きた時に夢の中で聞いた声の主らしき人物が言っていたことだ。確か『あなたを異世界へ送り込む』とか何とか言っていたが……まさかあれは本当だったということなのか!? そんな馬鹿な! いくら何でも非現実的すぎるじゃないか!! そう思いながらも他に説明ができない以上、信じるしかないわけで……。
とにかく現状を把握しようと考えた僕は改めて周囲を見回してみた。するとすぐ近くに見慣れないものがあることに気が付いた。それは、黒い棺桶のような形をした機械だった。一見ただの置物のように思えたが、よく見ると蓋の部分にあたる部分が透明になっていることに気が付く。中をよく見てみると、中には白い液体のようなものが入っていた。
これは何なのかと思い、手を伸ばして触れようとした瞬間、突然その容器の中の液体が動き出し、そこから何かが飛び出してきて僕の顔に飛びついてきた!
「うわっ!?」
驚きの声を上げると同時に飛びかかってきた何かを引き剥がすと、そこにはあの時の彼女がいた。
「お兄さん!僕だよ!」
「えっ!?」
どういうことだ?どうしてこいつが生きているんだ? そもそも、こいつは誰なんだ? 困惑する俺を前に、彼女は必死に訴えかけてくる。
「覚えてるよね?僕のこと……」
当然、忘れるわけがない。
あれだけ世話になっておいて、忘れろと言う方が無理がある。
とはいえ、今のこの状況を考えると、素直に再会を喜ぶ気持ちにもなれないが……。
しかし……何故だろう? 記憶の中のあいつの姿と目の前にいる彼女が重ならない。
いや、確かに面影はあるのだが……
どこか違うような……。
しばらく考えてみたが、結局よく分からなかったので、ひとまず保留にしておいた。
それにしても、これは一体どういうことだ!? 目の前にいるのは、紛れもなく彼女なのだ! しかも、あの頃の姿のまま!! ああ……神様。どうしてあなたは、僕にこのような試練をお与えになるのですか……。
僕は、彼女を前に何も言うことが出来ませんでした。