前書き
今回の話には、
『356.ギガント・マキア』
『357.人事を尽くして天命を待つ』
の内容が含まれております。
読み返して頂くとより解り易く、楽しんで頂けると思います。
光が収まると新生サタナキアは振り返ってコユキと善悪、バアル、アスタロトに向けて恭(うやうや)しく頭(こうべ)を垂れて口にする。
「お待たせしましたバアル、アスタロト、ルキフェル、いやコユキと善悪、弟サタナキアがご挨拶いたします、無事魔神へと覚醒いたしました、これもひとえに姉上と兄上たちの厳しい叱責があった故、ん? んん? ま、まさか…… いいや、そうとしか思えん! そうか、そうだったのか…… 一万三千年前、私を置いて受肉したのは…… 全ては今日この時の為、そうだったのですね! 私を魔神へと覚醒させる、その為に敢えて試練をお与えくださった、そうか、そうだったのか、なんと深く強大な愛であろう…… だと言うのに以前の私ときたら子供染みた反抗ばかりで…… お恥ずかしい…… ですが、ご安心あれぃっ! 今後は一刻も早く姉上、兄上方に追いつく為に、眷属と力を合わせて粉骨砕身(ふんこつさいしん)努力を重ねてまいります! 今後はサタンにオマカセ、ですぞぉ!」
パチパチパチパチ
周囲の悪魔達が惜しみない拍手を送る中、コユキは善悪から絆通信を受け取った。
『ねえコユキ殿? 計算通りなの?』
『馬鹿言ってんじゃないわよ、出たとこ勝負、いわゆるデマカセよ、でも結果オーライよね?』
『でござる♪』
『なははは♪ 後は仕上げよね、任せといて♪』
「サタン、良かったわね、立派よ…… アタシ達の希望通りの結果になって嬉しいわん、ところで何を守護するって決めたのん? 動物とか植物かな? 若しかして仮足運動する原生生物、アメーバとかかな?」
アガリアレプトが慌てて叫ぶ。
「あ、アメーバは私が――――」
「姉上からの祝福、真感謝の砌(みぎり)です、私が守護するのは我配下達、アイドルたる私を助け力を貸してくれる者達でございます、併せて同様に偶像に対する愛を注ぎ続ける者達、彼等彼女等も同様に守護して参る所存でございます、ただ今は、覚醒直後で力が不足しています、それらの者達に恩寵を与えられぬことが、些(いささ)か残念、無念でございます」
「そっか、善悪のエスディージーズでも馴染むまで結構かかっちゃうもんね、仕方ないよ」
「あの、アメーバは私で良いですよね、皆さん?」
アガリアレプトが少し煩(うるさ)く騒いでいる、空気読めよ。
まだ少し寂しそうにしているサタナキアを見つめていたオルクスが、純白の掌(てのひら)に同じく純白の結晶を顕現させながら第四の魔神となった彼に声を掛けた。
「おいサタナキア、今しばらく貸しておいてやる、ほれ!」
そう言って投げられた結晶を両手で大切そうに受け取ったサタナキアは言う。
「真核(しんかく)? い、良いのか? オルクス、これはそなたの命とも言うべき――――」
「ハヤク、ツヨク、ナッテ、カエセ、ヨ! フンッ!」
既に元のソフビサイズに戻ったオルクスは片言で言い捨てるように告げて、善悪の肩に飛び乗るのであった。
「ありがとう、友よ」
「フンッ! オンチョウ、ダロ?」
「あ、ああ! そうだったな」
再びオルクスと短く言葉を交わしたサタナキアは、渡された結晶を掌から体内に取り込んだ後、魔将達と三柱の側近に向けて叫んだ。
「みんなぁー♪ いつも応援ありがとぉー♪ コレ、お礼のシルシだよぉー♪ この想い、君にト・ド・ケーぇ♪」
パアァッ!
言葉を言い終えると同時に配下達の両手に光り輝くサイリウムライトが顕現し、直後にピタリと息の合ったヲタ芸を打ち始める配下達。
いや、目の前にアイドルたるサタナキアが居るのだ、この場合正しくはヲタではなくオタ芸と表記したほうが正確だろう。
これは後で知った事だが、世界各地で様々なアイドルを応援しているオタ達が一斉に活性化したのがこの瞬間だったようである。
サタナキア、彼もまた、中々ニッチな所を攻めたのである。
激しく踊り続けるサタナキア配下の姿から、集結した悪魔達に視線を戻したコユキは改めて宣言をする。
「皆ぁ! 地球を守るわよぉ! 今出来ることを一つ一つ積み上げていきましょう! 力を貸してね! 頼むわよぉ!」
善悪も続けた。
「力を合わせればどんな事でも不可能はないのでござるよぉ! 創造の力見せてやるのでござる! 作ったんだから直せるっ! でござろぉっー!」
サタナキアはじめ新旧の悪魔達が二人に答えた。
サイリウムダンス中の面々も踊りながら合わせた声がニブルヘイムに響き渡った。
『マラナ・タ』