「話してくれてありがとう」
「構わんよ、兄上をサポートするのが余の使命だから」
お礼にハヴァマールの頭を撫でた。
気持ち良さそうに猫耳を揺らし、ご機嫌だ。
「それじゃ、俺も風呂へ行ってくる」
「待つのだ、兄上」
そう俺の腕にしがみついてくる。
「どうした? まだ話していない情報があったか」
「んや、その……なんだ。頭を撫でてくれたから嬉しかったので、今の余は最強に上機嫌。特別の特別に兄上にスキルを付与するのだ」
「スキルを? どうやって?」
てか、スキルを付与できるものなのか。普通、習得には修行とか、職業別の専門学校で習うって聞いた。例えば、魔法使いなら魔法学校とか。騎士なら騎士学校で習う。俺の場合、スキルなんてあるわけもなく、それも無能と呼ばれていたひとつの要素だった。
でも今は『無人島開発スキル』とその派生がある。
言われてみれば、攻撃スキルとか防御スキルはひとつもなかった。これでよく今まで生きていたものだと自分を自分で褒めてやりたい。
自画自賛していると、ハヴァマールが俺の右手を――恋人繋ぎした。
「わっ!」
「さわぐな、兄上。べ、別によかろう!」
「だからって、これは」
対面して右手同士で恋人繋ぎ。
なんの儀式だよ、これ。
ドキドキしていると、魔力が流れ込んできていた。緑色の不思議なオーラが俺を包む。なんだこれは……力が湧き出てくるようだ。
やがて、俺はスキルをひとつ習得した。
[サンダーブレイク][Lv.1]
[槍専用スキル]
[効果]
強力な風属性攻撃を行う。
使用者が『ゲイルチュール』を装備している場合、物理・魔法攻撃が発生する。物理・魔法攻撃力 +50%。
使用者が『グングニル』を装備している場合、魔法攻撃力 +100%上昇。
「――な、なんだこりゃあ!」
「それは『サンダーブレイク』という風属性スキル。本来は、余の技なのだが……基本的に兄上に戦ってもらう方が多いと思うので、差し上げるのだ」
「さ、差し上げるって……いいのか?」
「うん。兄上に使って欲しい」
そんな純粋な子供のような瞳で見られると断れない。てか、俺がついに攻撃系スキルを手に入れてしまうとはな。これでもう親父や兄貴達からは無能扱いはされないし、もし会う事があればギャフンと言わせられそうだ。
「ありがとう、ハヴァマール」
「いいのだ、いいのだ。兄上の事は当然、誰よりも信頼しているし、大好きだからなっ」
そこまで言われると嬉しいな。
よーし、風呂入って飯を食べたら試し打ちしてみようっと!