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――あれから風呂も飯も済ませ、夜の浜辺。
満月が穏やかな海を照らしている。材料の『木材』を砂浜に複数ぶっ刺し、敵に見立てた。準備はこれで完了。
「よし、新スキルを試してみるか」
ゲイルチュールを取り出し、さっそくハヴァマールから貰ったスキルを試す。攻撃スキルなんて初めて使うからワクワクするなぁ……!
さっそく発動すると、つるはしであるゲイルチュールの穂先から“ビリビリ”と電気が走り出す。スキルの属性が『風属性』だから、きっと放電を始めているんだ。物凄い魔力だ。
やがてゲイルチュールは風属性の膨大な魔力を帯び、今にも爆発しそうだった。これはスゲェ威力になりそうだぞ。
さっそく武器を振り、練習用の敵(木材)へ攻撃をする。
「サンダーブレイク!!!」
技名を叫び、俺はついに攻撃スキルを――
「――まってええええええい、ラスティ!! この前はよくもやってくれたな!! ストレルカの救助はないわ、サメに追い駆けられて散々で――へ、なんだ、この雷……って、うああああああああああああああああああああああああああ……!!!!!」
轟雷が駆け抜けていくと、丁度浜辺から現れた“何か”に激突。え……今の声、ヨハネスか? また島に戻ってきていたのか……? いや分からん、あまりに一瞬すぎて今のが人だったのかさえ確認できなかった。
だが、声がしたような気がする。多分、気のせいだろうけど!
それより『サンダーブレイク』だ。
スキルは、膨大な雷を放出させるという、かなり効果力の攻撃だった。これなら、強敵が現れても……今日のような複数の敵を相手にしても楽勝だ。つまり、あのダンジョンを攻略できる可能性も見えてきた。
「……!」
その時、近くで音がした。
振り向てみると林の方から人の気配がした。誰かが俺を見ていたらしい。気になって向かってみると、そこには尻餅をつき、|茫然《ぼうぜん》となっているスコルの姿があった。
「スコル、見ていたのか」
「あ、あの……ラスティさん、今の攻撃って」
「新しい攻撃スキルだ。ハヴァマールからスキルを貰ってね。試し打ちしていたところだ」
「す、凄い……ラスティさん、強くなったんですね!」
「そうらしい。これなら、スコルを守れるよ。今日のようなダンジョンも楽勝さ」
「はいっ、わたしももっと強くなれるよう頑張りますね」
そう、抱きついてくるスコル。
あまりに突然で俺はビックリした。こんな大胆に真正面から抱きつかれるだなんて……!
良い匂いとか柔らかい物体が俺を支配する。
次第に心臓がドキドキ、バクバクして……手足が硬直した。どうすればいい。俺はどうしたい。
頭が真っ白になって選択が浮かばない。
――こんな時こそ、アルフレッドの言葉を思い出す。深く考えるのではなく、感じるのだと。
だから今、言葉は必要ない。
俺は行動で示した。