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今回の話は、


序章『1.エピソードゼロ』


の内容が関わっています。

読み返して頂くとより解り易く、楽しんで頂けると思います。




数日後、数柱の高位悪魔達による転移陣の展開された城の一室から、現世(うつしよ)に顕現しようとするオルクスを見送った人物は、あの魔神バアルであった。


美しい純白の魔神の手には凡そ(およそ)似つかわしくない薄汚れたズタ袋が握られている、先日ハミルカルから任務の内容と共に渡された物であった。


オルクスは驚きつつ声を掛ける。


「これは弟君、バアル様、このような場所にいらっしゃられるとは……」


「いや、ちょっと気になってね、どうだい真核(しんかく)を兄上に預けて体調に問題はないかい?」


オルクスは恐縮して返した。


「問題ありません、聖女と聖女の家族の魂魄(こんぱく)を集めるだけですから、すぐに完遂して見せましょう」


バアルはオルクスの前に手を差し出し、見知らぬ景色を浮かべあがらせて言葉を続けた。


「この建物の場所に転移した方が良いよ! だってここの所良く見てごらん? 赤い玉が落ちているだろう? これを味わってから任務に赴くと良いよ、アメ玉っていうやつだよね! 君前から興味があるんじゃなかったかな? そうでしょ?」


オルクスは不思議そうな顔で答える。


「私が、ですか? こんな玉に興味など別段―――― ああ、そうでしたね、親切に在処(ありか)を報(しら)せて頂くとは、お手を煩(わずら)わせました、ではこの場所に寄ってからと致します、ありがとうございました、バアル様」


「うん、気を付けてね、いってらっしゃい」


「はい、いってまいります…… ふふふアメ玉、か♪」





これが、善悪とコユキが二日掛けて聞き出した内容である、私の私見など入っていないので概ね(おおむね)正確だと思う。


では、時間軸を合わせて観察を続ける事としよう。



「ンデイッタ、アリアジ、ヲ、タスコト、デ、フカミ、ヲ、マシテイル、ノカ、ンデ、バーン! オシマイ」


善悪が言う。


「それが僕チン達が高校一年の時のガス爆発なのでござるな、んで二十四年後に復活して茶糖家を襲いに行ったと」


「ソソ!」


「ふうむ、大分話が繋がったけど、新たな謎も増えてしまったでござるな、どう思うコユキ殿?」


「むにゃむにゃ、はっ! そ、そうねぇ、バアルの力が単純に話が出来ないんじゃなくてもっと質(タチ)が悪いってのは決定だとして、問題はルキフェルがニヴルヘイム、コキュートスにいたって事よね?

ねぇオルクス君、確か一万三千年前に生き別れたんだよね? 再会したのはいつなのん?」


オルクスは必死に思い出しているようだ。


「エーット、ダイタイ、イチマンネン、イヤ、キュウセン……」


見かねたのだろう、モラクスが代わりに答えてくれた。


「九千年位経って弟達も信仰の対象となった頃、一度ニヴルヘイムに帰ったのですが、そのときですね。

既に無数の悪魔を率いて城を再建されていたのです。謁見した我ら兄弟はそのまま配下に加わったのです、本物であると心から信じて…… しまいました」


オルクスが大きな声で叫ぶ。


「デモ、ニセモノ、ダッタ! ユ、ユルサナイッ!」


コユキが微笑んで答える。


「ありがとねオルクス君、んでも妙よね? ね、善悪、気付いてる?」


善悪がはっきりと頷いて返した。


「バアルの事でござろ? 偽物がバアルを縛り付けた術を解除出来るとは思えないでござるが……」


そのとき本堂に入ってきたアスタロトが話に入ってきた。


「それは無理だな、封印や牢獄と言った術式展開には自分自身の魔力紋を刻むからな、同じ魔力紋を使わないと解除は不可能だぞ、錠と鍵の関係だな、ただしピッキングは不可能だがな、そうだろう? ラマシュトゥ?」


問いかけられたラマシュトゥも大きく頷いて同意を現していた。


「ふむ、しかし拙者もコユキ殿もニヴルヘイムにもヘルヘイムにも行った覚えはないのでござるよ……」


「行き詰っちゃったわね…… 仕方ない、いったん保留ね、んで、こんな時には?」


「出来る事を進めて置くのでござるな! 三日前に次なるアーティファクトの目星は付けて貰っているのでござる! 安心して!」


善悪の言葉にコユキは首を傾げて言うのであった。


「アーティファクトねぇ、でもアタシ等って既に三太郎全部持ってんのよ? これで十分じゃないの? 三太郎よ三太郎、英雄よ? 分かるエーユー!」


「間違ってもローマ字で言わないでね、相手が大きすぎて怒られたら死にそうだからね! ゴホンっ! 三太郎は集めたとはいえ悪魔退治の専門家ライコー達に比べると些か(いささか)不安でござろ? だから次に見つけるべきターゲットは鬼退治経験者『一寸法師のお椀』でござるよ! ちな場所は大阪でござる!」


「なるほどね…… んでも|八郎潟《はちろうがた》の時も思ったんだけど、この行ったり来たりが精神的に来るのよね、合理性を追求する日本人としてはさっ! 効率悪いわよね~嫌だわ!」


ニートのくせに……

こんな非合理で何ら生産性に関わってこなかったコユキにオルクスが声を掛けてくれる。


「ファ、ファイトオ! サンセンチィ! マラナ・タ!」


「「「「「「マラナ・タ!」」」」」」


スプラタ・マンユの声に続いてアスタロトがコユキと善悪に対して両手を差し伸べて指を開いて口にするのであった。


「いい機会だ、我、魔神アスタロトの忠誠を受けてくれ、コユキ、善悪、マラナ・タ!」


いつの間にか本堂の広縁に並んだゼパル、ベレト、カイム、ガープ、アフラ・マズダ、アンラ・マンユ、三頭の魔獣熊も揃ってマラナ・タの大合唱を二人に贈った。


それぞれのオーラで色鮮やかに光り輝いた本堂の中央で、コユキと善悪の二人は勇気とやる気が天井知らずに高ぶり続けていくのを感じるのであった。

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