「颯ちゃん…そういうところ……す…いいよねっ、いつも」
「ははっ、リョウ遠慮なく‘好き’って言えよ」
「なっ…すっ……ステキって言おうと思ったのっ!」
私は一人で部屋のドアに駆け寄り、鍵を開ける。
すると後ろから颯ちゃんの長い腕がドアを開け、私を玄関へと押し込んだ。
「リョウ、鍵を開ける前に周りを確認しろ。こうやって襲われたらどうする?」
玄関の壁に焼酎とつまみの袋を持たない手をつき、私の顔を覗き込む彼に、ハイ…とこくこく頷いた。
近いよ……ドキドキするよ。
心臓はそんなに簡単に鍛えられないんだよ。
部屋へ上がると、颯ちゃんはまずベランダの窓まで一直線に行き、リュックの中から取り出した補助錠を一番下に取りつけた。
「使い方わかるよな?見て」
そう言い私と場所を代わると、彼はベッド下の床に丸く畳んだ寝袋をポイっと出して上着を脱ぐ。
「ありがとう、颯ちゃん。大丈夫わかる」
「面倒がらずにちゃんと使えよ」
「うん」
立ち上がった私の腰に腕を回し向かい合うと
「ご褒美ちょうだい」
彼はその腰をくっと引き寄せた。
「…ご褒美……」
「うん、こんなの」
そう聞こえると同時にチュッ……と唇が重なる。
これを私にしろと…?
「はい、どうぞ」
にこにこ…いや、ニヤニヤと緩んだ顔で
「ほれ」
「ほっ…れ?」
「ご褒美もらうまで、このまま…ずーっとこのまま」
「……」
「ずーっとこのまま見つめ合ってるのもいいな」
「…難しい」
「何が?」
「ご褒美…?」
「チュッってするだけだぞ。何も濃厚なのは頼んでない」
「のう…颯ちゃん…いろいろ無理……だいたい届かないよ」
「両手を俺の首に回す」
「……」
「ほら、手順イチ。両手を俺の首に回す」
言われるままに、颯ちゃんの首に手を回す。
「次、背伸びする」
「……」
「背伸びして足らない分は迎えに行ってやる」
「迎え?」
「こうやって」
彼は、まだ背伸びをしない私の唇まで自分の唇を落としてきた。
「はい、リョウの実戦タイム。手順イチまではやっているから、ニとサンいくぞ。せーの……」
「それ…やだ」
せーのって、やだ。
「じゃ…待つわ、このまま」
颯ちゃんが腰に回した手を、私の後ろで組んだのがわかる。
「颯ちゃんは……ドキドキしないの?」
「すげぇしてる」
「見えない」
「見せてない」
「…経験の賜物?」
「……痛いとこ刺された…遊んでたのも無駄ではなかったと……そこは無理やりだが思いたい…刺されたところが痛いから早く慰めて」
「ご褒美じゃないの?」
「プラスで頼む」
「増えてる…けど…颯ちゃん……いくよ……」
「ん、存分にイってくれ」
私がきゅっと目を閉じて背伸びをすると…チュッ……颯ちゃんが音をたてる。
出来た……と、かかとを下ろそうとするが、彼の手が私の腰をぐっと固定して下ろせない。
私は爪先で立ったまま、もう一度彼の唇を受け止めた。
コメント
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ひゃひゃひゃ良子ちゃん〜んんん꒰๑˃͈꒵˂͈๑꒱ 思わず手順イチ、ニィ、って一緒にやる?ドキドキ💓ニヤニヤまで一緒に妄想しちゃったよ🤭
初コメント失礼します🙇♀️ フォロー失礼します