テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
──ブロロ……
車のエンジン音が響く車内
カラスバは怒っているのか、筋を立ててシオンから目を逸らしている
『カ、カラスバさん…あの……』
「なんであんな所行っとったんや」
『えっ……』
何故エイセツシティにシオンが行っていたのか
まさか記憶でも戻ったのかと思ったが、この様子だと戻っていないし
『…記憶、戻したくて…エイセツシティの夢をよく見ていたので、きっと何かあると思って…』
「そんなん戻す必要あらへん」
『で、でもっ…!私が記憶ないから…ダメなんですよね?』
震えた声でカラスバに話すシオン
記憶がないから?そら、そうや。記憶があればもっと上手くいっとった。今頃盛大に挙式でも挙げとったかもしれん
やけどそれを今のシオンに言っても意味が無い
今のシオンはオレの事が好きなシオンとちゃうんやから
「ダメやない。記憶なんかなくてええんや。無理に思い出しても別にええことなんか── 」
『私に話した4年前の話も全部嘘ですよね…?』
「は……」
『記憶を思い出したら、私にとって不都合な事でもあるんですか?だから思い出させたくないんですか? 』
違う。そうやない
記憶が簡単に戻るんやったら万々歳や。オレも喜んで記憶を戻す手伝いをする
やけど、さっきの事も頭を抱えて苦しそうにしとったやろ
デンリュウとヌメイルが居なかったら、あんな寒い中で倒れとったかもしれん
そのまま誰にも見つからず……死ぬ可能性だってあったんやぞ
それに記憶を戻す事がいかに危険な事かシオンは理解していない
「不都合とかやない。…お前の為や」
『お前の為って…別に私の体ですし、どう使おうが私の勝手じゃないですか!!』
何かを隠して言わないカラスバに段々腹を立て声が大きくなるシオン
そんなシオンに対し、筋を立て睨むカラスバ
「勝手…?お前に何かあったら、心配する人間が何人もおるんや。お前だけの身体やないんやぞ」
なんで分からんのや此奴は
自分がどれだけ大切に想われているか
今はオレやアザミだけやない、ジプソに癪やけどユカリ…それにセイカやMZ団の連中もお前の事を大切に思っとる
『っ…でも、知りたい…』
「チッ、聞き分けの悪い女やな。
記憶戻すにも、お前の身体になんかあったらどないするんや!?今日だって倒れとったやろ!!
あのまま誰にも見つからんかったらお前は──」
『いい!それでも記憶が戻れば…いい』
良い?何を言っとるんや
記憶が戻れば、死んでもええ思っとんか?
4年前からなんっっも変わっとらんな此奴は
周りの事なんか構わず、自分の命を軽く見て
『エイセツシティに何かあったんですよね 』
呟きながらカラスバの手を上から包み込むように握るシオン
『カラスバさんがそんなに苦しそうにする理由も知りたい、だから………だか、ら……』
あれ…なんで、眠気が………
グラッと視界が揺れ、カラスバの方へもたれ掛かるように倒れる
「……知らんでええ。知ろうとせんでええんや、なんも」
カラスバの悲しそうな声と共に、カラスバの後ろからロズレイドが心配そうに顔を覗いているのを最後にシオンは意識を手放した
『……ん…』
「姉さん、起きたの」
『…え?ア、アザミ………?』
「…姉さんエイセツシティに行ったんだってね。カラスバから聞いたよ」
『!カラッ、カラスバさんは!!』
「しばらくは会えないよ。」
アザミの言葉に目を見開く
『っ、アザミ…ねぇ、アザミもなんで教えてくれないの?4年前の事、嘘ついてるよね?』
「…姉さんの為だよ」
『カラスバさんもアザミも私の為私の為って…なんで?なんで教えてくれないの?』
アザミに訴えかけるとアザミは何処か辛そうな顔をする
「解離性健忘、これが姉さんの病気の名前 」
強いストレスやトラウマにより自分にとって重要な記憶が思い出せなくなる精神障害
「…次第に記憶を思い出す事もあるみたいだけど、思い出せずに終わる事もある」
『え……』
「それに記憶を戻る際に、起きる姉さんの身体への負担はきっと凄まじいものだと思う」
『な、なんで……』
確かに、過去の記憶を思い出す際は決まって頭痛がするがあれ程度なら我慢できる
「…倒れた要因も要因だから、きっと思い出したら強いショックでまた倒れてしまう可能性が高い。
次倒れた時、どれくらい眠るのか、それに起きてもまた違う記憶を消えてる可能性だってある…」
えっ?まって、それって悪循環じゃない?
シオンは自分の頭の中でぐるぐると思考を描き巡らせる
記憶を思い出しても、その記憶のせいでまた倒れて記憶を失うってこと?
『…え……めちゃ悪循環じゃん……』
「だから、カラスバは姉さんの記憶を戻さなかったの」
「それに姉さんももう察してると思うけど、姉さんの記憶を戻したいと一番に思ってるのもカラスバだよ、だけど姉さんの身体を1番に想って記憶を戻す事を避けているのもカラスバ」
何処か切なそうな顔をしながら話すアザミを見て何処か悩むように口に手を添えるシオン
『…うん、わかった。ありがとうアザミ』
「うん…えっ?わ、わかったって何が?」
話が全く繋がってないような気がして戸惑うアザミを他所に、ベットから出て家を出る準備をするシオン
「え?ね、姉さん?馬鹿なことしようと思ってないよね?」
『まさか、さっきの話聞いたらそんな事しないよ』
そう言って眉を下げて笑うシオンに少し不安を抱くが、その不安の正体が分からず口には出さずグッと堪える
『また記憶失いたくないもの』
「そっか、良かった…その、本当に無茶な行動はしないでね。姉さん」
『うん、分かってる。ごめんねアザミ、ありがとう』
そう言ってアザミの頭を撫でたあと足早にアザミの家を出る
『(…ごめんねアザミ)』
記憶がなくなる可能性がある…
可能性ということは確実ではない
『…それなら試さないとわかんないじゃん』
夢で会った、4年前の私も誰かの家に記憶が戻るキーがあると言っていた
『あるとするなら…元の私の家か…カラスバさんの家か…』
確率的に高そうなのは後者のような気もするが、カラスバさんの家にどう入るべきか…
カラスバさんは絶対入れてくれないだろうし…ジプソさんやアザミ等のサビ組関係者も駄目だろう
『…ああ…どうしようかな……』
そう頭を悩ませながら、シオンは家へ向かった
コメント
4件