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翌朝。
内田一輝は、デジタルカメラを鞄に忍ばせて登校した。
理由は単純だ。
“証拠”が欲しかった。
この学校の異常を、理屈で説明できる材料が。
廊下、階段、補習と呼ばれた部屋の前。
人気のない渡り廊下。
気になった箇所を、何気ない顔で撮影していく。
カメラのデジタル画面には、何も映らない。
普通の校舎。
普通の教師。
普通の風景。
(やっぱり、ただの思い過ごしか……?)
だが。
違和感は、フラッシュだった。
パシャッ──
光が弾ける瞬間、
空間がわずかに歪む感覚。
目の奥が揺れる。
空気が震える。
「……なんだ?」
気のせい、ではない。
確実に“何か”が反応している。
放課後。
内田は印刷室へ向かった。
誰もいないことを確認し、写真を出力する。
1枚目。
廊下。異常なし。
2枚目。
補習室前。異常なし。
3枚目。
手が止まる。
そこに写っていたのは──
巨大なコンパスを振り下ろそうとするサークル先生。
その先には、床に追い詰められた生徒。
恐怖に歪んだ顔。
まさに“命を奪われる直前”の瞬間。
カメラの視点。
教室の壁陰から覗く角度。
だが、こんな場面は撮っていない。
その場にいなかったはずの角度から、
鮮明に記録されている。
「……は?」
写真の隅。
日付。
年、月、日。
明らかに過去だ。
何年も前の日付。
次の写真。
ブルーミー。
薬品室でカッターをちらつかせ、泣き叫ぶ生徒を追い詰めている。
タヴェル。
空の教室で、生徒を壁際へ追い込んでいる。
エミリー。
歴史資料室で、静かに手袋をはめている。
デミ。
音楽室で、背後から迫る影。
サーシャ。
美術室、赤く染まったキャンバスの前。
知らない教師。
知らない生徒。
だが──
知っている顔も、確実に写っている。
毎日、笑顔で授業をしている教師たち。
全員が、“Fを取ったと思われる生徒”の命を奪う直前の瞬間。
写真はすべて、
決定的な一瞬で止まっている。
(カメラが……異能化した……?)
森での儀式。
不完全な成仏。
ヨシエ。
何かが、このカメラに影響したのか。
フラッシュが“時間”を揺らす。
過去の断片を焼き付ける。
内田は、写真を丁寧にまとめる。
犯行現場。
証拠。
言い逃れできない記録。
心臓が速い。
恐怖と、興奮。
オカルトフリーライターとしての血が騒ぐ。
(掴んだ……)
この学校は、
制度の名を借りた処刑場だ。
内田はノートパソコンを開く。
「吉田さんに報告しよう」
掲示板へアクセス。
写真の内容を詳細に記す。
日付の異常。
フラッシュの違和感。
送信。
画面を見つめる。
今度は、
“向こう側”がどう動くか。
そして──
FPEが、この異変に気づくかどうか。
内田は、初めて確信した。
自分はただの転校生ではない。
この学校の“構造”を壊せる、
唯一の外部要因かもしれないと。