テラーノベル
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夜。
ノートパソコンの画面に、新着返信の通知が灯る。
差出人――吉田千佳。
内田は静かに深呼吸し、開いた。
『内田さんの異世界転移は、
圧倒的な力を持つ存在が転移する「なろう系主人公」とは違います。
普通の人間として転移させられたのでしょう。
カメラは、FPEの世界の敵に対抗するためのハンデ。
もしかしたら、他にも力があるのかもしれません。
例えば、直接対抗手段とか。
どのみち、そのカメラのフラッシュは、きっと鍵になります。』
内田は、ゆっくりと読み終えた。
「……ハンデ、か」
確かに、自分は特別な力を持って転移したわけではない。
身体能力も、魔法も、超能力もない。
あるのは三十代の経験と、冷静な観察力。
そして――このカメラ。
フラッシュが空間を揺らす。
過去の“処刑”の瞬間を焼き付ける。
証拠。
記録。
だが、それだけだろうか?
(直接対抗手段……?)
もし、フラッシュが時間に干渉しているなら。
もし、あの瞬間を“固定”できるなら。
教師たちに向けたとき、何が起こる?
内田は椅子にもたれ、天井を見上げた。
「俺はヒーローじゃない」
森でも、ただ逃げ延びただけだ。
成仏の儀式も、完全には成功しなかった。
それでも――
今回は違うかもしれない。
この世界には、理不尽な“制度”がある。
Fという烙印で消される生徒たち。
それに対抗するための“ハンデ”。
内田はキーボードに手を置く。
『ありがとう。調べてみる』
送信。
短い言葉。
だが、そこには決意が滲んでいた。
画面を閉じる。
机の上のデジタルカメラを見つめる。
フラッシュ部分に指をかざす。
(鍵、ね……)
静かな寮の部屋。
外では夜風が窓を叩く。
内田は立ち上がり、カメラを手に取った。
「まずは実験だな」
教師に向けて使うのか。
それとも、補習室で試すのか。
どのみち――
FPEは、
もう“観察対象”ではない。
対峙すべき敵になった。
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