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『健人君。私ね、』
『だめ。俺に言わせろ。』
『え…!』
『早苗、俺は、君のことが…』
目が覚める。…あのまま、ずっと、夢の中にいたいなぁ………もう、健人君は、いないから…覚めてしまうと、会えない。…健人君…会いたいよ……もう、君が知ってる、私じゃなくなっちゃったけどね。
私は、もう、あの時の私じゃない…。あの日から、私は変わってしまった。少しずつ…少しずつ……猫を被っていたら、私はどこかに行っちゃって……本当の私は、どれ?どこ?もう…何も分からないよ…!
今日は部活ミーティング。一番話してる怜の隣に座る。
「なんで俺の隣なんだよ。」
「いいじゃん。」
「まあ、別に良いけどさ…。他に、いるだろ?誰か。」
いるよ…もう、いないけど…
「でも、今日は、君の隣。」
「そうか。」
あれ…?
「どうしたの?具合悪いの?」
「何でもない。」
「でも、耳、赤いよ?」
触れる。少し、熱い。
「なんだよ。急に触るなよ。」
彼は続けて、
「耳が赤いのはお前のせいだと思う。」
??どういうことだろう?私のせい?分からない。
部活が終わる前。部活Tシャツの話に。
Tシャツか…
「Tシャツは長袖が良いなぁ…」
「腕に傷でもあるのか?」
「まあ…そんな感じ。トラウマがあるし。」
「俺は、気にしないけど。」
トラウマのことは、何も聞かれなかった。私にとって、ありがたいことだった。
怜は、何も言わずに遠くを見ていた。
怜は、優しい。人を、知ってるような、そんな感じがする。でも、目は鋭く、心を見透かしているようだ。そのせいなのか、分からないが、彼は、私が望むような対応をしてくれた。…怜は、私のことを、知らないはずなのに、どうしてだろう…?
そして、いつも、何を考えているのか、分からない。何を思っているのか、分からない。彼は、いったい、何者なのだろうか。
早苗に、耳が赤いと言われたとき、少し、驚いた。彼女は、鈍感なのだろうか。反応を示さなかった。
彼女がトラウマがあると言ったとき、俺は確信した。彼女の過去に、何かあったのだと。それを隠す為に、自分を、偽っているのだと。そのうち、自分が分からなくなることを、知らずに。
目だけ笑わない彼女はいったい、何を考えているのだろう。過去に、何があったのだろう。俺のことは、何も知らない早苗は。