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初夏と初恋

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初夏と初恋

1 - 第1話 君と出会う。

♥

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2023年06月23日

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『__今年も猛暑となるでしょう。熱中症対策をしてください。』


今年も例年通り猛暑を告げるニュースが流れている。


外の木で鳴く蝉が煩い。

私は、団扇を仰ぎながらボーッとテレビを眺めていた。


「ちょっと夏華!!ぼーっとしてないで勉強しなさいよ!!課題終わってないんでしょ?」

「あーはいはい、やりますよー。」

口うるさい母の言葉を適当に流し、私は玄関に向かう。

「ちょっと、どこ行くのよ。」

「ん?えーと、コンビニ。」

「あぁそう。私はもう知らないからね、行くなら気をつけて行ってらっしゃい。」

「はーい。」

サンダルを履いて外に出る。

日差しが強い。アスファルトの上に陽炎が見える。


車庫から自転車を引っ張り出し、サドルの高さを確認する。去年の夏から一度も乗っていない。

少し低かった。私も少しづつ成長しているのだ。

調整し直した自転車に跨り、ペダルを漕ぐ。

暑い日差しの中に吹く、生暖かい風が妙に夏という季節を私の身に感じさせる。

家の前の坂を下り、一面が田圃の平原に出る。

人がまばらにいる。みんな、麦わら帽子を被って一生懸命に稲を耕している。


私より年寄りなのに大変そうだなぁと思った。


私はその田圃の間を抜け、コンビニに着いた。

自転車を留め、面倒臭いから鍵はかけずに、滑り込むようにコンビニの中に入った。

冷房が心地いい。

私は、一目散にお目当てのアイスを買うために、奥の方へ進んだ。

夏だからか、アイスの種類が増えている。

スイカやら夏の果物のアイスが多い。が、私が好きなのは白くまのアイスだ。昔っから夏にここに来てはこのアイスを買っている。

私は白くまのアイスを手に取り、レジに向かう。いかにも「バイトだるー」と思っていそうな若いギャルの店員が、「こちらへどうぞー」と言っている。

「お願いします。」

私は丁寧に白くまのアイスを差し出した。

ギャルのお姉さんは素早く読み込んで会計をしてくれた。

「ありがとーございましたー」

その声を背に私はコンビニを出る。

照りつける太陽が眩しい。流れ出る汗をそのままに、私は白くまの入ったビニール袋を自転車のカゴに入れ、サドルにまたがった。

「ふぅ…帰りますかぁ…」

私は自転車を漕ぎ出した。


しばらく漕いでいたところ、私は暑さでぼーっとしていたからか、ガードレールにぶつかってしまった。

「いてっ!」

そのまま体が倒れる。転んでしまった。

「うわ…擦りむいた…絆創膏なんて持ってないし!」

私は道路の端っこで膝をさすった。

私の家がある田舎は、この時期、しかもいちばん暑い日中になんて誰も出かけようとしない。そのため、車通りも少ないのだ。

血がジワ…と滲む。

膝に汗がポトッと垂れた。


その時だった。

「ねぇ、君大丈夫?」

「…無理……って、え?」

「ごめん、通りかかったら人が座ってるもんだから、つい。」

「いや、あ、ありがとうございます…?」

いきなり私に声をかけてきた人は、髪をかきあげて、白Tシャツにジーンズという、いかにも夏という感じの格好をしていた。

……それなりに顔もいいイケメンだ。男の。

私がついつい彼の顔をまじまじと見つめていると、彼は照れくさそうに頭をかいて笑った。

「あはは、そんなに見つめられると照れるよ」

「あっ、ごめん……。」

「それよりも、その膝。はい、絆創膏。」

彼は太陽のように眩しい笑顔で私に絆創膏を差し出す。

「え…いいの?」

しかも絆創膏の柄が可愛い。くまさんの絵が書いてあるものだ。

「こんなに可愛いの、貰ってもいいの?」

「あ!ごめんごめん!弟がそれ好きでさ…」

「へぇ、いい趣味してるね、弟くん。」

私達は、前から知り合いだったかのように話した。夏の暑さも忘れて、話していた。

私が絆創膏を貼り終わったところで、彼は立ち上がった。

「さてと、俺はそろそろ行くよ。」

「あっ、ごめんね。次いつか分からないし…さよなら!」

「…また、会うと思うよ。またね!」

彼は笑顔でそう言い残し、颯爽とその場を去っていった。

「…また会う…?」

私は彼が残していった言葉を気にかけながらも、倒れたまんまにしていた自転車を起こして、再び漕ぎ出した。

何故か、さっきよりも風が涼しく感じた。

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