目が覚めたら部屋で僕は大の字になっていた
頭にはヘルメットみたいなのをしたままだ
脱いでみると、窓の外から焼き芋屋の笛を吹く音が聴こえてきた
1階に降りて、冷蔵庫を開けると中に
待ち望んでいたロールケーキがあった
お母さんは夕飯のために、まな板で魚を
捌いているようだった
「母さん、一つ聞きたいんだけど」
「なに?夕飯ならまだよ」
「違うよ、ここじゃない別の世界があったとしたら…母さんは信じるかい?」
「そうねぇ」
まな板の内臓を三角コーナーに落としながら
こちらを見ずに
「母さんは目で見たものしか信じない主義だから…この目で見たら信じると思う」
と退屈そうに言った
「そうだ、炊飯器のスイッチ入れといて。
早炊で」
「あーはいはい」
僕は口についたクリームを指で拭って
炊飯器のスイッチを押した。緑色に画面が光って、いくつかの文字が出てきた
「で、夕飯はなんだっけ?」
僕は母さんに聞いた
「竜田揚げ」
母さんはふわっとした喋り方でボウルを持ちながら、僕に返した
窓の外は既に夕方が撒き散らされた後で、
サラリーマンが暗い顔をして歩いていた
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