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入学式から一か月後
五月
「ほらー!ちゃんとボール見てー!!それじゃあ勝てないよー!!」バスケ部の部長、佐伯先輩がみんなに聞こえるような大声で叫んだ。
「よし!んじゃ、少し休憩~~!!」
「ちょっと~~~!!亜子、ドリブルうまいじゃん!!」クラスで親しくしている友人の菊田小町(キクタコマチ)が、待ってました!という勢いで声をかけてきた。
「本当!覚えんの、はやっっ」それに続いて、滝川礼紗(タキカワレイサ)もやってくる。
「そんなことないって~」と、少し自信があったのを隠しながら、平気な顔をして言った。
(んもぉ、そんなこと言われたら、嬉しくなっちゃうじゃんか)
木造の広い体育館。
息を吸うたびに、鼻の奥に木の香りが入って来て、不思議とわたしの心を落ち着ける。
四つある大きな扉は部活中だからなのか、全部開けてある。コートは二つに分けられ、片方はバスケ部、もう片方ではバレー部が活動していた。
開いた扉からときおり吹いてくる柔らかい風が、わたしの肩までの長さの黒髪をふわっと包み、身体をわずかにくすぐった。
「中西さん、良かったらぜひ、うちの部に入ってくれない?」
「あ~。はい。考えてみます……」わたしはあまり乗り気でない雰囲気を出しながら言った。褒められたのは嬉しいけど、入るかどうかって考えると、すぐには返事ができなかったからだ。
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