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海の紅月くらげさん
「それは……」
「実里を過去に縛り付けているのは誰なんだろうね」
過去と向き合おうと実里くんは頑張っている。でも、彼にとってみんなに心配されるのは嫌でたまらないこと。
「潤はさ、臆病なんだよ」
意味が分からず首を傾げる。今まで潤のことをそんな風に思ったことはなかった。
「いいお兄ちゃんのフリして本当はいらないって言われるのが怖いから、実里がまた親に可愛がられることを恐れてる」
泉くんが穏やかに微笑む。その笑顔はどことなく潤に似ている。
「実里のあの事件が起こる前までは、実里が両親に大事に育てられてきたから。今は潤が期待されているんだろうけど」
九條の家の事情はよくわからないけれど、親達は泉くんの家に取り入って財産や地位を貰いたがっているとは聞いた。
彼らが抱えているのは、私みたいな人間にはきっとわからない苦しみ。
「図書室に行ってみなよ」
「どうして?」
「捜しもの、見つかるかもしれないよ」
泉くんはこうなることをわかっていたのかもしれない。彼の口ぶりはいつも全てを知っているみたいに思える。
「ありがとう!」
でもここは素直に泉くんの言葉を聞いて図書室に行ってみよう。
「いってらっしゃい」
図書室へと向かおうと踵を返した私の背後から泉くんの声が聞こえてきた。
「けど、本当に不自由なのは武蔵だろうね」
振り返った時、泉くんは既に私に背を向けて歩いていた。
本当に不自由なのは武蔵先輩……?
泉くんは疑問だけを残して去っていってしまった。