⚠注意⚠
百合。
どうあがいったって夕波が嫌いにならないなら、自分から嫌って貰おう。そう考えた僕は、誰もいない早朝の静まり返った校舎で一人、自分の机に花瓶を置いていた。
これでどうにか―僕から離れてくれますように。
朝。皆が学校に来始めた時間だ。僕はバレないようにゆっくりと教室に向かっていく。すると―
「…」
「…え?」
僕の机の前には、夕波が立ち尽くしていた。そして―
「如月、さん。」
今にも泣き出しそうな顔で夕波は僕の名字を言った。そんな顔を見て僕は―
「なに、これ。西園寺さん。誰がやったの?」
僕は啞然とした顔を作り、夕波の目を見つめる。
「わか、らないよ。わかってたら、とっくのとうに、辞めさせてる。」
涙を堪らえるように話す夕波を見て、僕はちょっと罪悪感が湧き、
「僕が片付けるよ。落書きじゃないだけマシだし―」
そんな事を言おうとした瞬間
「西園寺さん、何してるの?」
「あ、えっとこれは…」
「いじめ…なの?」
焦る夕波を見て、クラスメイトが釘を刺す。
「いじめなんて最低。」
「あの『優等生』は嘘だったの?」
「え…」
「あ、如月さん、大丈夫?」
「え、まあ…」
違う。違う。そう言いたい筈なのに、口から言葉が出てこない。
朝の騒動はこのくらいで終わった。
そうして僕は『可哀想な人』としてのレッテルを貼られ、
夕波は『いじめをした最低な人』としてのレッテルを貼られた。
そうして無事にお互いの距離を置けた。それなのに。どうして―
さみしい気がする。僕の願いは叶ったはずなのに。
「どうして―」
どうして、涙が出そうなのだろう。…でも、それは夕波も同じだった。
忘れられられた筈なのに、私の願いは叶ったはずなのに。
「どうして…?」
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