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ねらち
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#衝撃のラスト
山根利広
963
KOKUGA
312
11
目が痛くなるような白の中に、優しい風が吹いた。
カーテンが揺れて、桜の花びらが舞い込む。
そういえば、近くに桜の木があったっけ。僕は、病室に入り込んだ花びらの行方を追う。
花びらは踊るように、男の頬へと着地した。
しかしその男は、それを払うこともしない。
いや、この男はそれができないのだ。改めて実感すると、僕の視界はぐにゃりと歪んだ。
ベッドに横たわる男は、ずっと穏やかな呼吸をしている。
上下する胸と心電図の機械が刻む規則的な音だけが、彼が生きていることを教えてくれた。
「早く起きてくださいよ」
僕はそう言って、男の頬の桜の花びらを取った。
彼の意識があれば、「気持ち悪いな」と言って、じろりと睨まれただろう。
昔は理不尽だと思っていたが、今はそれすらも恋しい。
いつものように、ふてぶてしく笑う日はもう来ないのだろうか。
「僕がもっと、ちゃんとしていれば……」
何十回も、何百回もした後悔。どれだけ悔やんでも、現実は何も変わらない。
「僕が、こうなるべきだったのに」
いつも結論はここにたどり着く。彼ではなく、僕がこうして病室に横たわるべきだった。
「また来ますね」
そして合わせる顔がなくなって、僕は病室を出る。
外に出ると、桜が咲いていた。彼と初めて会った日も、確かこんな季節だったな。
僕は、ゆっくりと瞼を閉じて、あの日々を思い返した――。
コメント
1件
みぅです🤍🥀 読み終わりました……。 桜の花びらが舞い込む病室の静けさと、それに反比例するように重い後悔の念が、すごく胸に響きました。ベッドの上の人の意識があれば「気持ち悪いな」って睨まれただろうって回想、好きです。日常の些細なやりとりが、もう戻らないって思うと切ないですね。 「僕が、こうなるべきだったのに」——この自己否定の言葉が、この物語の根っこにあるんだろうなって感じます。続き、気になります。