ミンドリー、さぶ郎、ぺいんの3人はピーナッツレースの会場になっている工業港にやってきた。
このイベントは市が主催している事もあり、イベント中の犯罪には高額な罰金の「イベントテロ罪」が適用されるらしく、市民の他に警察や救急隊、ギャングと思しき市民の姿もあった。
開始時間より早く会場に着いた3人だが、既にスタート地点は多くの参加者・観覧者で賑わっていた。緑の長髪の男性、ピンク髪で紙袋をかぶった女性、金髪で黄色のお面の男性という3人は、本人達の意思とは別に大変目立っており、それ故に既にミンミンボウに来た幾人かに声がけをされていた。
「あれ?ミンドリーさん?飲食物持ってきているなら売って欲しいんだけど、いいかなぁ?」
「いいですよぉ」
「さぶちゃん!飲み物ある?」
「ありますよ〜」
「ぺいんさん!今、買い物していってもいい?」
「もちろん!」
ミンミンボウのランポは簡易的な出店となった。他に飲食の出店はなかったらしく、イベント説明のアナウンスが入るまで出張販売は続いた。
イベントのルールはそれほど難しくなかった。
・ピーナッツという車のレースで、車は貸与してくれる。
・実況があるので指定の番号の無線をトランシーバーもしくはラジオで聞く。
・指定したコースを走る。
・上位2〜5位までは賞金。
・優勝者には市で1台の車。
そう、単純に与えられた車で指定のコースを速く走れば良いのである。
「ピーナッツってさぁ、たしかバランス取るの難しかったよねぇ?」
色とりどりの車の中からどの車にするか選んでいる時、3人の中で唯一ピーナッツを所有していないぺいんが不安をこぼした。
「まぁ、確かにカーブの時に大分左右に揺れるけどね。それよりもこのレースは参加者が多いから、いかに他の人にぶつからずに前に出るかがポイントかもね」
車に詳しいミンドリーがそうアドバイスする。
「うぅん。ま、なるようになるかぁ」
スタート時刻が近くなり指定された無線から実況の声が聞こえ始めた。
───さぁ、やって参りました、第1回ピーナッツレース!参加者は20人。混戦が予想されます。
───レースはまもなく開始です!参加される皆様はスタート位置に着いてください。
───それではスタートです!
スタートの号令で一斉にピーナッツが走り出した。皆、スタートダッシュを決めようとしたため、コースが狭くなったところで事故が起き、渋滞していた。
スタートダッシュせず、先頭集団の後ろに付けていたミンドリーは上手くこの混乱を抜けたようで、5人ほどの先頭グループに入っていたようだった。
ミンドリーのいる先頭グループから大分後ろのグループにさぶ郎とぺいんはいた。
「お母さん待て〜」
「勝負には関係ないなぁっ!」
前を行くぺいんを追いかけるさぶ郎と、大声を出しながらさぶ郎を煽るぺいん。さぶ郎がぺいんを追い越そうとした時に二人が接触し、スピードが落ちた隙にさぶ郎が前に出た。
「勝負には関係ないんだよねぇ」
今度はさぶ郎がぺいんを煽る。
「ちょ、おま!」
「お母さん、ばいば〜い」
「ちょ、こら!待ちなさい!」
中盤というよりは最後尾に近いぺいんとさぶ郎はお互いに追いつ追われつしてコースを走り抜ける。
ゴールまであと少しというカーブで上手く曲がれずに転倒したぺいんが叫んだ。
「この車の運転むずっ!」
「あははははは」
ミンドリーは先頭グループにいたが、惜しくも入賞には届かなかった。レース中、ぺいんはずっと叫んでいたし、さぶ郎は笑っていた。
帰り際。ミンミンボウのランポの周りには開始前と同じように何人かの顔見知りが集まり、再び出張販売もできた。
前の街では3人一緒にイベントに参加することがなかなかなかったこともあり、3人とも終始笑顔で楽しんでいた。
ほくほくで帰宅する三人だったが、そんな3人を見つめる視線があった。
(あれ、ぺんちゃんじゃね?)
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