ピーナッツレースのあった翌朝。
ミンドリーが日課にしつつある朝イチのリサセンから帰ると、ちょうどさぶ郎が起きてきたところだった。
「さぶ郎、おはよう」
「おはようござまーす。ミンドリーさん、お母さんは?」
「ぺいん君なら自販機の補充に行ったよ?」
「えー!さぶ郎も行きたかったのにぃっ!」
そう言うと、さぶ郎はすぐに電話をかけた。
「お母さん!さぶ郎も自販機行きたかった!なんで起こしてくれないの!」
「今どこ!」
「もう、次はちゃんとさぶ郎に声かけてね!」
電話の相手はミンドリーの予想通りぺいんで、その声は聞こえないが電話の向こう側が容易に想像できた。
電話が終わったさぶ郎にミンドリーが声をかける。
「ぺいん君、なんだって?」
「もう、北の街だからそのまま補充して帰ってくるって」
「じゃあ、ぺいん君が帰ってきたら、今日どこに行くか決めようか?」
ぺいんが戻るまでの間、ミンドリーとさぶ郎の二人は開店準備をしていた。
そろそろぺいんが帰ってくる頃合いかと思った時、店の裏手から銃声が聞こえた。
「銃声?」
「裏のコンビニかな?」
店裏のガレージからそちらの様子を伺うと、ちょうどコンビニ強盗が行われているようだった。通知があったのか遠くからパトカーのサイレンも聞こえてきた。
その状況を見ていたミンドリーから、さぶ郎に少し驚くことが伝えられた。
「よし。さぶ郎。店の食べ物と飲み物持ってきて」
「何するの?」
「犯人と警官に売る」
「あははは。わかったぁ」
さぶ郎が店から商品を持ってきたのを待ち、2人がコンビニの屋根から入り口前に飛び降りると、ちょうど人質を抱えた犯罪者と警官が店から出てきた。
「え?ミンドリーさんとさぶちゃん?」
「なんで一般人がここに?見世物じゃねぇぞ!」
一応、犯罪現場ではある。
犯罪者と警官はこの場にそぐわない中華服を着た一般人─ミンドリーは緑刀を背負っているが、さぶ郎は手ぶら─が現れたことに、大変驚いた。
すこし緊張した空気の中、ミンドリーが口を開く。
「この裏で中華料理店やっているんですけど、ご飯と飲み物買いません?」
「………え?」
犯罪現場でこんなことを言われれば、警官も犯罪者も目が点になる。
「………じゃぁ、貰える?」
「了解でーす。さぶ郎、こちらの方の対応お願い」
「あーい」
二人は犯罪者と警官それぞれに飲食物を販売すると、パルクールでコンビニの店舗を登りミンミンボウに帰っていった。
「………なんだったんだ今の?」
二人がミンミンボウに戻ると、自動販売機の商品補充に行っていたぺいんが帰ってきていた。
「お母さん、お帰り〜」
「はい。ただいま。二人でどこに行っていたの?」
「裏のコンビニ。銃声したから行ってみたら強盗していたから、犯罪者と警官に中華を売ってきた」
思いがけない行動にぺいんは驚きの声を上げた。
「はっ!?待て待て待て。情報量多くね?つうか、犯罪現場て何してんの?」
「ぺいん君。今後、あそこでコンビニ強盗があった場合は押し売りができる」
「ミンドリー、何言ってんの?危ないでしょ?」
「大丈夫。刀がある」
「相手は銃持っているでしょ?」
「勝てる自信がある」
「さぶ郎は持ってないでしょ!」
「両手あげながら近づいたら、意外と撃たれないよ?撃たれても市民殺人罪だね」
「いやね?白市民はそういう事しないの。もぅ、なんかさぁ、滲み出ていない?」
「それはしゃーない」
「ああ言えばこう言う………」
いつも通りなのか、ぺいんはミンドリーに口負けた。まだ小声で「無敵やん」などとこぼしている。
「もう、とりあえず無理はしないで?」
お母さんのお願いにミンドリーとさぶ郎は「はい」と返事をした。
改めて3人はこの日の予定を話し合った。
「で、今日はどうすんの?」
「さぶ郎、遊園地と卓球したい!」
「海辺の?」
「そう!」
「じゃぁ行ってみる?僕はそれで良いけど、ミンドリーはどう?」
「俺もそれでいいよぉ」
「じゃ、決まりね」
今日の3人は昼食を取った後、遊びに出かけるようだ。
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