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結構長い間アリエッタを愛で続けて満足した4人は、ぐったりしたアリエッタを交代で抱っこしながら、歩いていた。

知らない場所なのでとりあえず運任せで歩いている……わけではなく、実はエルツァーレマイアが先導していたりする。


「エルさんに迷いが無いけど、本当に大丈夫かなぁ」

「私達は何も分からないのよ。でもあんなに自信に満ちた笑顔だから、何かあるかもしれないのよ」


どうせ目的も土地勘も無いのだから、ここは普通とは違うエルさんに任せてみようと、3人の意見は一致した。何より不思議な力を使うアリエッタの母親だから、何か手があるのかもしれない。人としても精神体としても年長者ということで、まだ若いミューゼ達にとっても少しばかり頼れる存在であった。それに……


「アリエッタもすっかり安心しているのよ。会話が出来るみたいだし、やっぱり肉親は大事なのよ」

「あの光景、ドルネフィラーにいる間だけなのが、やるせないなぁ。ここから出たらわたくし達がしっかりしないと」


既に亡き者という認識になっている母エルと娘アリエッタの間に入る無神経さは、誰も持ち合わせていない。今は心安らかにふれあっていて欲しいと、少し身を引いて見守っていた。

一方、気遣われている事は察しているが、理由までは分からないエルツァーレマイア。まさか自分が死んだ者として扱われているなど夢にも思わず、ミューゼにアリエッタを託す作戦を考えていた。


(アリエッタがみゅーぜとぱひーを特に気に入ってるのは確かなのよね。森から連れ出してくれた恩人という事だし……私なんか最初から熱いお茶かけられる程度には好かれてないのよねぇ)


娘との初めての会話は苦い思い出となっていた。今ではすっかり仲良くできているが、本来この次元の神ではないエルツァーレマイアにとって、ミューゼやパフィのような信頼のおける存在は非常にありがたいのである。

流石に他所の世界でいつまでも子守りは出来ないので、1度の滞在期間は限られる。そもそも、こちらの神に怒られないようにと、アリエッタの精神世界にのみ姿を現し、他には干渉するつもりは無かった。ドルネフィラーによってミューゼ達と交流を持ってしまったのは完全に想定外だが、こうなったら思い切ってアリエッタの事を頼んでおきたいと思っていたのだ。


(それにしても、話が通じないのに仲良く出来るって、うちの娘は凄いものね。私は……あぁそういえばトヨタマとも最初はそんな感じだったわね……もしかしてこれが、コノハナサクヤが言ってた『血は争えぬ』というやつでは?)


自分が通ってきた道を、娘も経験していると思ったその顔は、すぐにだらしなくなった。そしてそのまま腕の中でぐったりするアリエッタに、再び頬擦りするのであった。


『あうぅ~』

『はぁ可愛い。娘って最高』


そのまましばらくの間、ミューゼ達に娘を託す作戦を考える事は無かった。




『あら、あれは何かしら?』


のんびりと歩いていた一行の先には、赤色の何かがあった。近づくと、赤い結晶のようなものが浮かんでおり、その周りを小さな赤い菱形が大量に湯気のように立ち上っては消えていた。


「ん~…あーなるほど。あれが『ドルミライト』か」

「『ドルミライト』?」

『「ドルミライト」?』


ドルネフィラーについて知っているネフテリアが、その何かの正体を言い当て、ミューゼが聞き直す。そしてその単語をエルツァーレマイアが復唱する。

少し驚いたネフテリアだが、頷いて肯定。すると、エルツァーレマイアはパフィと手を繋いでいたアリエッタに近づき、赤色の何かを指さしながらアリエッタに名前を教え始めた。


『アリエッタ、あれ「ドルミライト」って言うんだって。何かしらね』

『へぇ、「ドルミライト」かぁ』

「……なんだか和むのよ」


目の前で行われる親子のやり取りに、パフィの顔が緩む。


「で、ドルミライトってなんですか?」


一旦和んでから、いきなり冷静な顔になったミューゼが質問の続きをする。そんなミューゼの様子に少し呆れながら応えるテリアだった。


「え~っと……まだ仮説しか存在しないんだけど、あれは以前に取り込まれた人の夢が結晶化したものなんじゃないかと言われているの。触れると見た事のない光景が広がって、何かが起こるらしいわ」

「何か?」

「ええ、ドルミライトは沢山あって、その全てが全く違うものを見る事が出来るらしいの。いくつか記録に残っていたけど、楽しい光景、悲しい光景、なんだかよく分からない光景とか、多種多様で意味が解らなかったって」


いつどこに出現するか分からないドルネフィラーには、来ようと思って来れるものではない。だからこそ伝えられている事のほとんどが仮説となっているのだった。


「あと、見るだけじゃなくて関わる事も出来るとか。体験談だと、一緒に遊んだ人、怖い何かに追いかけられた人、あとは1本の道をただ延々と歩いたって人もいたらしいわ」

「なにそれこわい……」

「人の夢なんてそんなものかもね。わたくし達だって色々な夢を見て生きてるし、沢山のリージョンの人々が見る夢なんて、それこそ無限にあるのかもしれない」


2人は再び浮かんでいるドルミライトを見た。特に害の無さそうなそれは、ゆっくりと移動している。

しかしここは未知なる部分が多いリージョン。いくら最後には戻れるといっても、知らない事には当然警戒をする。

先程までは知らない場所で混乱するのを避ける為、あえてまとめて説明する事はしなかったが、アリエッタを愛でて落ち着いたという事で、ミューゼとパフィにここでの危険について少し警告する事にした。


「もし襲ってくるドルミライトをみかけたら、迷わず逃げるの」

「そんなのもあるんですか……」

「怖い夢らしくて……そんなのにアリエッタちゃんを巻き込むのはちょっとね」

「たしかに」

「わたくしもそんなの見たくないし」

「あはは、それもそうなのよ」


2人はドルミライトには直接触れないでおこうと決めた。テリアはドルネフィラーについて知りたいとは思っているが、危険を冒してまで調査をしたいとは思っていない。ピアーニャの手伝いはするが、大事な事は専門の人に任せるのが一番だと思っている。


「さて、今回は見た事だけをピアーニャに報告すればいいから、またのんびり歩きましょうか。エルさん……ん?」


再度探索を始める事にして、エルツァーレマイアの名を呼ぶ。名前ならとりあえず反応してくれるからである。

しかし、ネフテリアが振り向いた時、なんとエルツァーレマイアとアリエッタはドルミライトに近づき、指で突いていた。


『この楽しそうな雰囲気の力?は何かしらね~』

『触って大丈夫なの?』

「エルさんっ!?」


気づいた時にはもう遅く、ドルミライトを中心に勢いよく景色が変わっていく。

逃げるどころか警戒する間もなく、全員新たな景色に巻き込まれてしまった。


「……なにこれ?」

「ここって建物の中なのよ?」


触れたドルミライトから広がったのは、とある建造物の一室だった。


『わぁ、なにこれ?』

『さっきのドルミライトってのから、何か広がったわねー。ふんふん、なるほどねー』


女神親子は呑気な感じでキョロキョロと見渡している。

しかし、逆にミューゼとパフィはその光景に戦慄していた。


「……なんかすっごい見覚えあるのよ」

「パフィも? 奇遇ね、私もこの部屋知ってるわ」

「ん~……そういえばどこかで見覚えがあるような……」


何かを思い出す様に部屋の中を見渡すネフテリアだが、ミューゼとパフィはすでに嫌な顔になっている。そしてその原因は、2人が考える中で特に面倒くさいと思っている者の姿で現れた。


バンッ!


「ワハハハハハ! 今日の相手はお前らか!」

「げっ……」

「うわぁ……」


扉を勢いよく開けて姿を現したのは、リージョンシーカー・ニーニル支部の組合長、バルドルだった。




ドルネフィラーの外では、ピアーニャが調査で役立ちそうな者がいないか、ワッツに質問されていた。


「シーカーの中にはドルネフィラー経験者はいないのかい?」

「う~ん……そういえば、たしかバルドルが15ねんほどまえに、ドルネフィラーにいったといっていたな」

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