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episode #8 start
┈
西畑大吾side
正直に言う。
……さっきの壁ドン以降、
俺の心臓、
ずっと忙しい。
キッチンで水飲んでても、
背中、
気配に敏感になる。
「……大吾くん」
後ろから、
静かな声。
(来た)
振り向いた瞬間。
——どん。
また、
壁。
「……謙杜?」
「逃げないでください」
声、
落ち着いてる。
昼間みたいな可愛さ、
ない。
距離、
近い。
「……なぁ」
「大吾くん」
俺の言葉、
被せて遮る。
「さっき」
「俺がやめた理由」
「……?」
「大吾くんが」
「耐えられなさそうやったからです」
(……自覚ある)
「……優しさやろ、それ」
「違います」
即否定。
「主導権です」
……は?
「……どういう意味や」
謙杜、
少しだけ口角上げる。
「俺が」
「やめるって決めた」
「それだけです」
——ぞく。
背中、
冷える。
(……この子)
(思ってたより、ずっと)
「……謙杜」
名前呼んだ瞬間。
ぐい。
壁に押し付けられる距離、
さらに縮まる。
「……近」
言い終わる前。
——ちゅ。
一瞬。
ほんまに、
一瞬。
唇、
軽く触れただけ。
でも。
(……あ)
頭、
真っ白。
謙杜、
すぐ離れて。
でも、
目は逸らさへん。
「……不意打ち」
そう言って、
悪びれもせず。
「……っ」
言葉、
出ぇへん。
「大吾くん」
低く。
「俺」
「最初から」
一歩、
距離詰めて。
「守られる側やと思われるの」
「別にええんです」
でも。
「勘違いされたままは」
「嫌でした」
「……勘違い?」
「俺が」
「弱いって」
——静かに。
「誘拐されたから」
「従ってるって」
その目。
揺れてない。
「俺」
「ここにいるの」
「自分で選んでます」
……完全に。
「……なぁ」
声、
かすれる。
「それ」
「いつからや」
「最初から」
迷いなく。
「攫われた日から」
「大吾くんの家、入った瞬間から」
「……攻める側やったんか」
「はい」
にこ。
「遅いです」
(……)
俺、
大きく息吐く。
「……負けたわ」
「今?」
「今」
謙杜、
少し満足そうに。
「……大吾くん」
「ん」
「これからは」
「ちゃんと分かってください」
顔、
近づく。
でも、
今度は触れへん。
「俺」
「可愛いだけじゃないです」
——その一言で。
完全に、
捕まった。
誘拐犯は、俺。
でも。
関係の主導権を握ってたのは、
最初から謙杜やった。
壁から離れて、
一歩下がる彼を見ながら。
(……やばい)
(この先)
(俺のほうが)
(翻弄される)
確信した夜やった。
┈
episode #8 finish
𝐍𝐞𝐱𝐭…❤️💛𓈒 𓏸