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2.大水槽
💙「わぁ」
夜間営業で暗いとは言え、順路のあちこちに特別なライトアップがされておりあまり大声を出すとばれてしまうかも知れない。
翔太はそれをわかっているのか控えめに声を出した。
翔太の身長くらいありそうなエイが悠々と目の前を泳いでいく。青い呑気な顔のナポレオンフィッシュ、小さいサメに大きいサメ。イワシの魚群が他の魚と出会ってぱっと散り、また集まる。
翔太はそれらをただ黙って見ている。白い横顔が水族館特有の青い光に照らされて、いっそ青白くも見えるのに不思議なほど神秘的で美しかった。
翔太が綺麗なのは今に始まったことじゃないけど、時々こうして人間離れした美しさで見る人を惹き込んでしまう。
これが仕事以外で発揮されていなければ良いとこんなに願うことはない。翔太のこんな綺麗な姿を見てもし好きになってしまう人がいたら、なんて考えてしまう。翔太を信じていないわけじゃないけど、それとは別にそういうのは危うい。
大水槽の底の方から、上を眺めるようにして見上げていた翔太が不意に言葉を紡ぐ。
💙「これさ」
💚「うん?」
💙「阿部ちゃんのユニット曲みたい、涼太と佐久間と3人の」
言われてみれば、青い海の底というシチュエーションなので似ていなくもない。
💚「そうだね」
💙「こんなとこで撮ってたんだな」
💚「撮るか」
間髪を入れずにツッコむと、翔太は満足げに口角を上げた。
その後ろを魚がすい、と泳いでいく。
視界の端に気配を捉えたのか、翔太はまた大水槽に向き直った。