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3.ペンギン歩道
夜のペンギンは、ほとんどみんな寝ている。
人間の歩道の真横までペンギンたちの足場があり、思わず足を止めてアクリル板に密着しながら寝ているペンギンを見たくなってしまう。
この水族館にいるペンギンたちはさほど大きくなく、でも数は多い。団子のようになって眠るペンギンたちにはなんの悩みもなさそうに見える。
ペンギン歩道には、ここにいるペンギンたちの相関図が貼られていた。
当然と言えば当然だが夫婦が数組、その子どももいるらしい。見分けがつかないほど大人と同じ姿になってはいるが。
💙「阿部ちゃん」
💚「なに?」
💙「阿部ちゃんは子ども、好き?」
💚「うーん」
ペンギンを眺めているのか、背を向けていたいだけなのかは測りかねたが、翔太がそう言った。
このペンギンたちでさえも夫婦関係になり子どもを生んでいる。俺たちは、この関係を続けている限り子どもを育てる日はまず来ない。
俺に縛られていていいのか?
翔太が言いたいのはおおかたこういう事だろう。
💚「俺は、翔太といるのが一番幸せだから」
今までにも何度か同じ質問をされて、その度に同じ答えを返してきた。
翔太は自分は子どもにそこまで興味がないと言っているけど、縛っているのはお互い様なんだから。
💚「翔太を不安にさせてるなら、俺もっと傍にいるから」
💙「そんなんじゃない、阿部ちゃんは悪くない…」
翔太は時々急に繊細なのだ。がさつなようで、ちょっとした事を気にしすぎてしまうのも知っている。
💚「俺が欲しいのは、これからも翔太だけだから」
そう言って頭に手を置くと『ヤダ』と振り払われ、翔太はさっさとペンギン歩道をあとにした。
コメント
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翔太がペンギンみたい